自分は明確に揺さぶる人間

為末さんがツイッターに見出している、やりとりの中で意見を最適化していくという、学習の方法。それに加え、投稿で意識していることがあるという。

為末「いまあるものを揺さぶって崩していくということですね。最適化と揺さぶり、この2つのバランスの中で、人間は学習していくと思うんです。例えば社会の理想の姿があるとしてそこに向かっていくのが最適化。一方でその理想の姿自体に問いかけて、思い込みを疑う機会を作るのが揺さぶり。私は揺さぶる側の人間なので“こうすればいいよ”とかノウハウやメソッドを提供するより、枠組みを外す役割なんですよ。
 たとえば2007年に丸の内の路上で開催した、東京ストリート陸上をプロデュースすることは陸上競技の揺さぶりだったと思います」

 常に揺さぶり、変化を促す存在。考えてみれば為末さんの競技人生も、海外参戦やプロ転向など、自分自身や陸上界を揺さぶり続けてきたように思える。

為末「前はもうちょっと社会的に偉くなりたいと思っていたんですけど、私はもともとアウトサイダーな人なんですよ。目の前の人が固まりそうになっているときに、揺さぶる役なんだと、今は認識していますね。認識のCHANGEですね。」

 為末さんはこれからも、さまざまな「CHANGE」を促していってくれそうだ。

■為末大(ためすえだい)
元陸上選手。1978年広島県生まれ。2001年に開催された世界陸上の400メートルハードルで、スプリント種目としては日本人初のメダルを獲得する。05年の世界陸上でもメダルを獲得。00年のシドニーオリンピック、04年のアテネオリンピック、08年の北京オリンピックに出場。12年に現役を引退し、現在は執筆活動やスポーツに関するさまざまな事業に携わる。近著は『熟達論』(新潮社)