20歳のときに出演した映画『カンゾー先生』で一躍、脚光を浴び、日本映画に欠かせない俳優となった麻生久美子さん。演じる役柄の幅は広く、シリアスからコメディまで演じこなし、二児の母親となった最近では、母親役を演じることも多い。俳優として多様な顔を持つ麻生さんだが、そこにはさまざまな「CHANGE」があったようだ。【第3回/全5回】

麻生久美子 撮影/三浦龍司、ヘアメイク/ナライユミ、スタイリスト/井坂恵(dynamic)

出産で気づいたこと

 ドラマや映画に数多く出演している麻生久美子さん(45)は俳優であると同時に二児の母でもあり、プライベートについてもあちこちで語っている。私生活での「CHANGE」について聞いてみた。

「それはやっぱり出産ですね。出産して、本当に大切なものができたっていう、愛情的なものが自分の中にあるんだっていう、そんな気づきがすごく大きかったです。

 それはいいことなんですけど、一方で自分の時間が一切、なくなったというもの大きいですね。今はちょっと時間が作れるようになってきましたけど、赤ちゃんのときって大変じゃないですか。それまでずっと自分のために時間を使ってきたのに、急に奪われて“これはなんだ?”って思ったのが衝撃でした」

 それほどに子どもを育てるというのは大変なもの。それでも麻生さんは二人目を出産している。

「子どものいる生活に慣れたというのもありますけど、やっぱり子どもはかわいいですから。今は仕事よりそっちが生きがいになって、子育てが趣味です、みたいになっていますから」

親と子のいい関係とは

 二児の母親であり、子育てをしながら俳優業に取り組む、兼業主婦の麻生さん。上の子どもが反抗期を迎え、「かわいい」と言いながらも、いろいろ苦労しているようだ。

「あたたかい目で見守れればいいんですけど、そうもいかないです。やっぱり気持ちにも波がありますから、難しいですね。まだ小学5年生なので、これからもっと出てくると思うんで、覚悟はしていますけど」

 映画『高野豆腐店の春』で、麻生さんは藤竜也(81)さんが演じる、頑固な豆腐職人・辰雄の娘・春を演じている。父親の豆腐作りを手伝いながらの二人暮らし。辰雄は父親でありながら、豆腐作りの師匠でもある。二人の互いを思いながら、自立した人間としての立場を尊重し合う関係が、見ていてとてもあたたかい気持ちになる。

「この作品のお父ちゃんと娘みたいな関係が理想ですね。私もちゃんと子育てをして、ひとつの人格として子どもと接して、いい関係を築ければいいかなと思っています」

©『高野豆腐店の春』製作委員会