「エンストもあったけど、無駄なことなんて1つもなかった」

「僕らが新人の頃にロケをした番組を、『ウチのガヤ』のディレクターさんが見てくれていて。その『ウチのガヤ』を見ていたスタッフさんが『笑神様』に呼んでくださり、さらにそれを見たヒロミさんが、『なすなかはロケがいいな』といったことをライブで言ってくださりました。
 たまたま仕事がつながっていったけど、そのルーツは大阪時代にあったという感じでしょうか。エンストもあったけど、無駄なことなんて1つもなかったです」

 一方で、中西さんは「まさかロケで忙しくなるなんて微塵も思わなかった」と照れ笑いで振り返る。当初は、正統派な漫才コンビとして売れることを目指していたからだ。

「東京進出時は、“漫才で『M-1』のような賞レースで結果を出して世に出ていきたい!”というシンプルな理想がありました。ネタで売れたいし、売れると思っていたんですが、自分たちの需要は意外と手前にあった。それは全くの想定外でしたね」

──東京でもネタで売れたかったところ、注目されたのが“ロケ”だったことはどうお感じですか?

「“僕らの立ち位置は、ロケやったんや”って思いました。“あ、これか”って。お仕事は全部全力なんだけど、芸人としての目標をネタにしか置いていなくて、それ以外は通り越して考えてしまっていたから、やっと気付けたんですかね」

──漫才で売れることを夢見ていた立場からすると、“ロケ芸人”と呼ばれることに抵抗などはありますか?

「ないですよ。呼んでくれて全っ然いいです。ロケも漫才も、『人間を出す』という肝は同じなんですよ。中西茂樹という人間が、漫才するかロケをするかというだけのこと。それが個性なんで」

「無駄なことなんて1つもない」──。いま鬱屈としている人も、この言葉を信じればいつか光が見えるかもしれない。

(つづく)

■作品情報
『いまのところ』(双葉社)
著:中西茂樹(なすなかにし)
発売日:2026.02.18
予価:1,650円 (本体1,500円)
判型:四六判
ISBN:9784575320510