女優・尾野真千子は、河瀬直美監督に見出され、14歳で映画『萌の朱雀』主演を務めた。その後06年のNHK連続テレビ小説『芋たこなんきん』、08年の映画『クライマーズ・ハイ』、09年のドラマ『火の魚』を経て11年に朝ドラ『カーネーション』でヒロインの座を射止めた。その天衣無縫な姿で数多くのドラマファンから支持を得ている尾野さんにとって重要な変化、「THE CHANGE」は何だったのだろうか?
【第3回/全4回】

尾野真千子 撮影/三浦龍司

 6月2日公開の生田斗真さん主演の映画『渇水』で、尾野さんは生田さん演じる岩切俊作の別居中の妻・和美を演じている。

『渇水』は、水道局員の岩切が水道代の滞納者の停水を執行するなかで、母親から放置された幼い姉妹に出会う。彼女たちが暮らす家の水道を止めていいのか、自分の仕事とのはざまで岩切は思い悩み、困難に直面する。

 そこで、尾野さんが岩切の立場だったらどうするかをたずねてみた。

「本当にね、こういうお仕事ってなんだろう、大変っていう一言じゃもうかわいそうですよね。ロボットだったらよかったのにって話ですよね。人間だから、かわいそうとかいろんな感情が出てくるから、もうこの気持ちは、誰でもわかりますよね。そういうどうしていいのかわからない感情。

 私もどうするかわからない。私だったら……なんか“ちょっとだけ水あけとこうね”、とか言いたい(笑)。子どもだけだとしたら、ちょっとじゃあ飲む分だけねって残したり。だから作中の人たちがやったみたいに、たらいに水をくんだりとか……“ちょっとぐらいいいじゃん”って思うけど、でもこの人たちの仕事からしたらそういうわけにはいかない。もどかしかったですね」と、岩切が置かれたむずかしい立場に共感していた。