「僕、がんになりました」
 2017年12月、自身のブログで、多発性骨髄腫という血液がんで「余命3年」であることを公表した写真家・幡野広志。以来、彼のもとには大量の人生相談が届くようになり、それらと真摯に向き合った言葉をまとめた書籍『なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)はベストセラーになり、この8月には『息子が生まれた日から、雨の日が好きになった。』(ポプラ社)も刊行された。
 死を間近に感じながら、写真家·文筆家として活動を続ける幡野さんの人生の転機、「THE CHANGE」とはなんだったのだろうかーー。【第2回/全5回】

幡野広志 撮影/Yukari Hatano

 2018年以降、幡野さんのもとには多くの人生相談が寄せられるようになり、それらをまとめた書籍『だいたい人間関係で悩まされる #なんで僕に聞くんだろう。』(幻冬舎)は大きな話題を呼んだ。なぜ、ひとは人間関係で悩むのだろう……。幡野さんに聞いた。

「人はひとりで生きていけないからだと思います。どんなに孤独を愛する人でも、人間社会の集団生活からは逃れられなくて、人との関わりがないと生活が維持できない。完全に孤独になるのは、現代社会では不可能ですよね。そうなると、そこには必ず人間関係の悩みがついてくる」

 幡野さんいわく、大切なのはその悩みをいかに軽くできるかだという。

「悩みを大事(おおごと)にせず、他人事(ひとごと)に変換するのが大切だと思います。本人にとっては大事だけど、はたから見ると大したことじゃない悩みはたくさんありますよね?そういった感じで、一度、自分の悩みを他人事にして俯瞰で眺めてみると、答えが見つけやすくなるのではないかと思います。

 あと、“納得できない”という感情を捨てるのも大切です。たとえば、がんを宣告されるって人生の一大事じゃないですか?その時、本人はもちろん、配偶者や親せきなどが、医師に“その診断結果は納得できない”って怒るパターンがあります。でも、納得できるできないという感情に関係なく、がんは進行します。それと一緒です。人生の困難に直面したとき、感情で思考を停止すると、時間だけが過ぎていきます。それが一番よくないので、まずは感情をおさえて冷静になることですね」