僕自身はなにも変わっていないのに、親族や周囲が勝手に変わってしまった

 実は、幡野さん自身も、がんが発覚した後、人間関係に悩まされた時期があったという。

「僕自身はなにも変わっていないのに、親族や周囲が勝手に変わってしまったんですよ。僕をどうにか助けたいという善意からということはわかっているのですが、急に連絡を取ってきたり、こんな治療法があるぞと教えに来たり。勘弁してくれと思う内容が多かった。その結果、がんが発覚してから、まず行ったのは人間関係の整理でした。図らずも、そこで僕の人生が大きく“チェンジ”してしまったんです」

 以降、過干渉な親族や友人との交流を断ったと語る、幡野さん。現在は、奥さんとお子さんと、かけがいのない時間を過ごしているようだ。

「アメリカ 航空宇宙局·NASAの宇宙飛行士は、ロケットに乗る直前の待機部屋で、自分の配偶者と子ども、そして、その子どものパートナーにしか会えないそうです。自分の親兄弟は待機部屋に入れない。つまり、NASAの定義では、親兄弟よりも、配偶者のほうが重要な家族なんです。

 日本では、血のつながっている親族を最も大切にしますが、僕個人は、NASAの定義が正しいと思っています。だって、親兄弟は自分で選べないけど、配偶者は自分で選べますから。そっちの方が、圧倒的に大切です。つまり、結婚って家族の選び直しなんです。なので、残りの人生は、僕が選んだ家族との時間を大切にしたいですね」