十種競技の元日本チャンピオンから、“百獣の王”として芸能界で大ブレイクを果たした武井壮。現在、50代を迎え俳優としても活躍の場を広げる彼に、人生の転機『THE CHANGE』を聞いた。前編では、独自の「勝つための哲学」と、彼を芸能界へと突き動かした亡き兄の存在、そして極楽とんぼ・山本圭壱らとの運命の出会いに迫る。【第1回/全2回】

武井壮 撮影/河村正和

 誰もやらないような難しいことでも、やってみちゃえば、だいたいのことはうまくいく……そんなふうに考えているところはあります。やってみないことには何も始まらない。

 ただ、それが「チャレンジ」という言葉で一括りにされるのも少し違う。可能性の低いチャレンジはしたくない。できると確信を持ってチャレンジしたい、成功のために何をすればいいかを常に考えて。できるかどうか分からない挑戦を闇雲にやると、途中で心が折れちゃうんです。

 陸上競技は、そんな確信を持ってスタートしたチャレンジの一つです。陸上を始めたのは大学に入ってからと、始めるのが他の人よりも遅かったんです。だから勝つための最短距離を選ばなければいけない。そう思っていました。

 最初の専門は短距離で、初めて走った100メートルのレースで10秒台を出しました。それが新聞に取り上げられるニュースになって。

 でも大学2年で国体の選手に選ばれたときに、同じ兵庫県の代表に朝原宜治さんがいて、彼がその国体で10秒19という、日本記録を出したんです。走り方はきれいだし、力の使い方も適切で、まだまだ伸びしろがあった。これは大学の残り時間では勝てないなと感じて、それなら日本一になるにはどうしたらいいかと考え、大学3年から十種競技へ転向しました。

 そんな私が芸能界に入ろうと思ったきっかけは兄の存在です。

 子供の頃に親が離婚して、私たちを引き取った父も家に帰らなくなり、兄弟二人で暮らさなければいけない状況に。兄と話し合って、僕は「勉強とスポーツを頑張る」と決めていたんですが、兄が「俳優になりたい」と言いだしたんです。