収入ゼロの飛び込み営業。玄関前で歌った『恋のダイヤル6700』でトップに

 それで僕も、スーツにネクタイを締めて、飛び込みで電器店のセールスをやることになった。

 でも、僕は芸能界しか知らないし、セールストークなんてできないからまったく売れない。最初の2か月は固定給をもらえたけど、3か月目からは歩合になって、収入ゼロ。

 あれは地獄だったね。しまいにゃ電気も水道も止められちゃうし、キャベツにマヨネーズをかけて食べるのが精いっぱいだった。

 そんなある日、世話になってた先輩が僕にこう言うわけ。「なぁ晃、おまえのことはみんな知ってるんだから、もう開き直っちゃえよ」って。

 それで次の日から8トラックのカラオケを担いでいって、玄関前で「♪リン、リン、リリン」と歌ったんですよ。驚いて出てきた家の人が「エッ、晃くんじゃない。こんな所で何してるの?」。会話が弾むうちにテレビ1台、お買い上げ。

 ご近所のおばちゃんが集まって来て「私、テレビだけじゃなくて冷蔵庫も買うわ」ってなることもあったりして、たちまち営業成績トップになっちゃった。

 僕はこう見えて口が達者だし、意外にツブシが効くタイプなんですよ。でも、同じ仕事を長く続けるのは苦手で。

 5〜6回くらい転職したのかな。それでまた転職を考えていた頃に、職場の後輩に言われたんです。「転職したら、また仕事を一から覚えなくちゃいけない。それなら音楽をやったほうがいいですよ」と。

 それが20年くらい前。それからは音楽一本でやってます。

 もちろん、今も『フィンガー5』の曲は歌っていますよ。僕にとって宝物だし、カラオケで歌い継がれているのも素直にうれしい。今の僕は「金のために音楽をやってるんじゃない、好きだからやってるんだ」と自信を持って言える。それが何よりうれしいですね。

晃(あきら)
1961年5月9日、沖縄県具志川市(現・うるま市)生まれ。1970年、『ベイビーブラザーズ』でデビュー後、73年に『フィンガー5』のメインボーカルとして再デビュー。一世を風靡する大スターに。80年に音楽活動を休止するが、今世紀に入ってから音楽活動を再開。5月18日からスタートする『夢スター歌謡祭夢スター「春・秋」』に出演予定。