デジタルになった今でも「ラッシュ映像は一切見ない」。名優を形作った教訓

 ラッシュの段階を俳優に見せることも、見せないこともどっちも正しいと思います。ただ俺は、その出来事もあって、デジタルですぐにその場で見られるようになった今でも、ラッシュの段階では映像は一切見ません。

 大森さんに怒られたからというより「たしかに」と納得したので。完成した作品だけを観る。いい顔でアップで芝居していても、作品によってはそこはいらないかもしれない。完成したもので自分を判断する、そういうことなんです。

 キャリアを重ねていくなかで、俺は刑事を多く、長くやる俳優になっていきました。今年ファイナルを迎えた『科捜研の女』シリーズには2000年から参加して、土門薫として2004年から22年くらい。主演作『警視庁・捜査一課長』の大岩純一は2016年から約10年。『警視庁強行犯係』の樋口顕も最初の登場から20年近くになります。

 京都に行くと「土門さん」と呼ばれ、東京では「大岩さん」と呼ばれたりする。これ、本当なんです。刑事ドラマってセリフの中に名前がよく出てくるんです。

「あなた」「私」じゃなくて「土門さん」「大岩一課長」って呼ばれることが多い。だから視聴者の方の頭にも名前が刻まれやすいんでしょう。そうしたキャラクターって、勝手に生きてるんだと思います。

 たとえば彼はきっと今も、京都府警のどこかで働いているか、引退して警察関係の別の仕事をしているか。いずれにしても自由に生きている。そんな気がしますね。

 俺自身は演技しているとき以外は、引きずるようなことはないです。それは刑事でもほかの役でも関係なく、家に帰って仕事の役が日常に滲み出てくることはまったくありません。

つづく

内藤剛志(ないとう・たかし)
1955年5月27日生まれ。大阪府出身。1980年に映画『ヒポクラテスたち』でデビュー。以降、長年にわたり多数の刑事ドラマ・サスペンスを牽引。27クール連続ドラマ出演という記録を持つ「連ドラの鉄人」としても知られる。主演作に『警視庁・捜査一課長』シリーズ(大岩純一役)や『科捜研の女』シリーズ(土門薫役)などがある。公開待機作として、『旅人検視官 道場修作』(6月12日公開)が控える。

■作品情報
映画『幕末ヒポクラテスたち』
監督/緒方明 製作総指揮/大森一樹
出演:佐々木蔵之介 藤原季節 藤野涼子 室井滋(ナレーション) 真木よう子 柄本明/内藤剛志
新宿ピカデリーほか全国公開中
公式サイト:https://gaga.ne.jp/bakuhippo_movie/
©『幕末ヒポクラテスたち』製作委員会