ブルース・リーに憧れ、ヌンチャクを振り回した少年時代。高校を中退し、俳優を目指して10代で東映アクションクラブに入り、スーツアクターからキャリアをスタート。その後、『愛という名のもとに』(フジテレビ系)や『妹よ』(フジテレビ系)などの大ヒットドラマに出演し、「トレンディ俳優」として時代を牽引した。
 以降も、ドラマ『白い巨塔』(フジテレビ系)の冷徹な天才外科医から、映画『20世紀少年』のヒーロー、さらにはコミカルなキャラクターまで、長いキャリアの中でさまざまな役を演じてきた日本を代表する俳優・唐沢寿明さん(62)。
 そんな唐沢さんの最新主演映画『ミステリー・アリーナ』(5月22日公開)は、国民的推理ショーを舞台にした前代未聞のミステリー。謎に包まれた推理クイズ番組の司会者・樺山桃太郎という強烈なキャラクターを、見事(?)なアフロヘアで怪演している。今年に入って長年所属した事務所から独立し、新たなスタートを踏み出した唐沢さんの変化、THE CHANGEに迫った!(第2回/全3回)

唐沢寿明 撮影/冨田望

 10代でキャリアをスタートし、それから40年以上、俳優として活躍し続ける唐沢寿明さん。2023年には還暦を迎え、より一層、俳優としても人間としても深みが増している。そんな唐沢さんが「なるほど」と思った故・蜷川幸雄さんの一言や、俳優として面白い作品を作るうえで必要なこと、さらに、長年所属した事務所から独立した今の心境を探る。

「俳優は何をやってもいい」独立した唐沢寿明が語る“守られすぎる”ことへの危機感

――2026年1月に、これまで長年所属されていた事務所から独立し、新たな一歩を踏み出されました。会社を出てみて初めて分かること、知らなかったこともあったかと思いますが、心機一転した今の気持ちを聞かせてください。

「ありがたいことに、事務所にいるといろいろと守ってもらえるんです。ただ、その裏を返すと“やりたい役ができない”ということにもなる。“あなたはこういう役はできない。これはイメージがちょっと……”と勝手に守られてしまうことは、良くも悪くもある。

 僕自身は“俳優なんだから何やったっていいじゃん”と思うけど、やっぱりプロダクション側はイメージを優先しようとするんです」

――以前、ドラマ『西遊記』(1994年/日本テレビ系)で孫悟空役をやられたときに、ファンの方から「イメージが壊れる」といった手紙などが来たそうですね。

「そういう声があったということは聞かされていました。でも、自分の中ではイメージを壊すというより、“僕はこれができますよ、こういうこともできますよ”と、演じることでいつも自分のビラを世間にまいている気持ちなんです。

 今回の樺山桃太郎もその一つなんだけど、いつも同じ系統の役ばかりやっていたら、手持ちのビラが1枚しかないじゃない? もしそれがダメになったら、もう俳優としてメシが食えなくなる。だからオファーをいただいたときもすごく考えているし、いろいろな役をやって、いつも多種多様なビラをまくようにしているんです」

――ビラという種をまいて、どこかで芽が出ればいいな、ということでしょうか。

「そう。出なくても別にそれは仕方がないもんね。何もやらないよりはマシだよ(笑)」

――さて、これまで唐沢さんが演じられた作品の中でも、私が特に印象に残っている一作がドラマ『美味しんぼ』(1994年~99年/フジテレビ系)の山岡士郎です。原作漫画のキャラクターとあまりに似ていて、子どもながらに衝撃を受けました。

「『美味しんぼ』の話は、今のフジテレビの社長(清水賢治氏)が持ってきたの。彼は漫画やアニメが好きだから僕のところに山岡士郎の役を持ってきたんです。

 当時のことで覚えているのは、原作者の雁屋哲さんが撮影現場に来て『唐沢君、漫画のキャラクターそっくりにやってくれ』って言われて、自分なりに必死に考えてやってみた役なんです」