ブルース・リーに憧れ、ヌンチャクを振り回した少年時代。高校を中退し、俳優を目指して10代で東映アクションクラブに入り、スーツアクターからキャリアをスタート。その後、『愛という名のもとに』(フジテレビ系)や『妹よ』(フジテレビ系)などの大ヒットドラマに出演し、「トレンディ俳優」として時代を牽引した。
以降も、ドラマ『白い巨塔』(フジテレビ系)の冷徹な天才外科医から、映画『20世紀少年』のヒーロー、さらにはコミカルなキャラクターまで、長いキャリアの中でさまざまな役を演じてきた日本を代表する俳優・唐沢寿明さん(62)。
そんな唐沢さんの最新主演映画『ミステリー・アリーナ』(5月22日公開)は、国民的推理ショーを舞台にした前代未聞のミステリー。謎に包まれた推理クイズ番組の司会者・樺山桃太郎という強烈なキャラクターを、見事(?)なアフロヘアで怪演している。今年に入って長年所属した事務所から独立し、新たなスタートを踏み出した唐沢さんの変化、THE CHANGEに迫った!(第3回/全3回)
この日は終日、取材の予定がビッシリ。すると取材の合間に「誰か俺に似ている人、いないかな? ちょっと代わってくれないかな(笑)」と、スタッフたちとジョークをかわし、現場を明るく盛り上げる唐沢寿明さん。
長年エンターテインメント業界に身を置くベテラン俳優が、今の日本のエンタメ業界について思うことや、おしどり夫婦としても知られる妻・山口智子さんとのエピソードについてもうかがった!
忖度する組織とクリエイターの葛藤。唐沢寿明が鳴らすエンタメ界への警鐘
――作中では、唐沢さん演じる樺山の強引な番組の進め方や、番組アシスタントやスタッフに対するハラスメントなども描かれていますが、これまで唐沢さんがテレビ・エンターテインメント業界に身を置かれてきて、昨今のコンプライアンス事情について、どう感じられましたか?
「やっぱり映画や配信の作品じゃなかったら、こんな(過激な)ことできないだろうと思います。だって、エンターテインメントなんだから、これが本来の作り方であって、コンプライアンスなんかで押さえつけちゃダメでしょう?」
――最近は周りを気にしすぎて、ものを言えなくなったという俳優さんの話も聞きます。
「そうそう。でも、いろいろなことを決めている人たちはみんな組織に所属しているから、どうしたって、いろいろ忖度する。それはそういう立場だから、しょうがないんだよ。
でも、僕たちはクリエイターだから“そういうことじゃないでしょう”という考えをするんです。だから、考え方がまるっきり真逆なんだよね」
――その真逆な人たちが一つのものを作ろうとする中で、価値観や考え方の違いが生じたとき、唐沢さんはどうされるのでしょうか?
「僕たちは一生懸命変わろうと思っていろんなチャレンジをするけど、エンターテインメントの流れみたいなのを作っているのは、残念ながら組織にいる方たちなので、彼らが考え方を変えない限り、この世の中は変わらないと思います。
だって、バブルの頃からテレビ局も映画会社もずっと同じことをやっているじゃない? 時代がこれだけ変わっているのに、やり方を変えなかったらどうなるかっていうことだよね」
――自分の立場が最優先なんですね。
「僕たちは何でも変えたいんだよ。いつでも変わる準備がある。だけど今のシステムを壊さない限り、世の中は変わらないんです」
――そんな中に新しく入ってきた俳優さんたちを、唐沢さんからはどう見えますか?
「かわいそうだなと思うよ。悪いこと何もできないしさ(笑)。もちろん、悪いことがいいとは言わないよ。それに、銀行もお金を貸してくれないんだって。売れている若い俳優が結婚して銀行に行ったら『先がどうなるか分からないから』ってお金を貸してくれなかったって言うんだよ」
――それは職業が不安定だから、という理由なのでしょうか。
「そう。でも、職業不安定っていったって、いま売れているわけじゃない。少なくともあと何年かは何とかなるんだから、それくらいの年数は貸してあげればいいのにね」