1999年の俳優デビューから、25年目を迎えたオダギリジョー。映画『血と骨』、『ゆれる』、ドラマ『時効警察』シリーズや、演出も務めた『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』、NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』とさまざまな顔を見せてきた。さらに監督・執筆業やミュージシャンとしても活動し、決してひとくくりにできない男である。盟友・石井裕也監督と5作目のタッグを組んだ映画『月』は大きな問題提起の一作となった。そんなオダギリさんのTHE CHANGEを探る。【第3回/全4回】
映画『月』は、『新聞記者』や『空白』、ドキュメンタリー『パンケーキを毒見する』などを手掛け、2022年の6月に急逝したスターサンズの名プロデューサー・河村光庸氏が生前「最も挑戦したかった題材」と語っていた1本だ。原作は作家・辺見庸氏による同名小説。2016年に相模原で起きた実際の障がい者施設殺傷事件をモチーフに書かれている。
「すごいところに向かっているなと思いました」
大問題作と謳われる映画のオファーを受けたときの印象を、オダギリさんは率直に口にした。
「なかなか簡単に手をつけていい題材じゃないですから。石井裕也監督をはじめ、プロデューサー陣の気合いというか、気迫、覚悟を感じました」
主人公は宮沢りえさんが演じる、あるときから筆を取れなくなり、施設で働き始めた作家・堂島洋子。オダギリさんは洋子の夫・昌平を演じている。『湯を沸かすほどの熱い愛』(2016)以来の夫婦役となったが、設定は辺見庸さんの原作小説から、かなりの脚色を加えられている。昌平も原作には登場しない。石井監督がゼロから生み出した存在だ。
「原作の小説から映画にしていく過程の中で、何かを表現するために、この人物がいたほうが、監督には答えが出しやすかったんでしょう。要は、この役が生まれたということは、この映画になくてはならない人物だという判断があったんだと思います」