オタクの青年から正義の勇者、さらには闇金業者やAV監督まで、まったくの別人格を深く掘り下げて演じる山田孝之。幅のあまりの広さから、人は時に彼を“カメレオン俳優”と呼ぶ。声優、監督演出家、音楽活動、青果の生産者など多彩な顔を持ち、すべての活動に全身全霊を傾ける山田さんの「CHANGE」とは、なんだったのだろうか?【第2回/全5回】 

山田孝之 撮影/吉村智樹

演じた男は自分とはかけ離れた人格だった

 この取材の前日、山田孝之さんは新作映画『唄う六人の女』の試写会で舞台挨拶に立った。山田さんは、怒りの感情を隠そうとしないガサツな不動産業者、宇和島を演じている。今、目の前にいる、言葉の一つひとつを丁寧に紡ごうとしてくれる山田さんとは、かけ離れた人物だ。

 これまでさまざまな役を演じ、時にはクセが強い人物になる場合もあった山田さん。どのようにして役に「CHANGE」しているのだろう。 

山田「この役を演じる前は、少し憂鬱でした。舞台となった森林は、とても気持ちのいい空間だったんです。 

 ただ、演じる宇和島という男は、僕とは逆の感性の持ち主です。森の樹々や草花、動物、昆虫などに対して、“恨みでもあるのか?”というくらい忌み嫌う。暴言を吐く。自分は自然が好きなので、宇和島を演じるのは気が重かった。“こういう人にはなりたくない”“この人とは仲よくはなれない”と感じる人物に自分がなるわけですから。気持ちを切り替えるのに時間がかかりました。 

 過去にもそういう経験はいっぱいありました。宇和島に限らず、怒りや憎しみを胸に抱いた人物を演じるときは、撮影前に憂鬱になる場合が多いです。恨み、妬み、そんな気持ちには、なるべくなりたくないですから」

 森林でのロケは京都の南丹市美山町の原生林を使って行われた。山田さんは約一か月、豊かな自然のなかで過ごしている。そのような素晴らしい環境のなか、自然を嫌悪する人物を演じるのは、相当な精神力が必要だっただろう。