かっぴーが考える“天才の定義”とは?
かっぴーさんに「人生でTHE CHANGEを実感した瞬間は?」と問うと、「ペダルに力が加わる瞬間です」と答えてくれた。
ーーだから、力が伝わっている・進んでいる、という表現なんですね。
「そうです。描きはじめたころに、こう、ギアがガチっとハマって漕ぐ手応えが実感できたからこそ、無風でもずっと続けることができたんです」
ーー手応えというのは、筆が乗るとか、プロットが湯水のように湧いてくるとか、そういったことですか?
「単純に、自分が読んでおもしろいと思っていたから、手応えを感じていました。これ、自分で言うとほんとうにイタイかもしれませんが、僕は人を見る目があるんですよ。“こいつは天才だ”と言っていた友達は軒並み売れたりして。その目線で見て、『エレン』はほんとうにおもしろいと思ったんです。
普段は周りの評価よりも自分の評価が高いと思うことはあまりないですが、『エレン』はちがいました。だから反響が来ないことはイヤでしたけど、おもしろいから続けられたんです」
ーー『エレン』にも天才が登場しますし、キャッチコピーが「天才になれなかった全ての人へ」です。かっぴーさんが思う“天才”とは?
「さっき話した、ペダルに力が入っているかどうか、車輪が気持ちよく回っているかどうか、得意分野を見つけて、その得意分野が今の世の中にマッチしているかどうか……そういった、内的要因と外的要因の両方が噛み合った状態のことを“天才”と呼ぶんだと思います。同時に、発揮されていない才能を持っていても、天才とは言えないとも思っています。
だから全人類、平等にまだわからないんですよ。まだ見つかっていない新しいスポーツの天才かもしれないし、ただまあ、30歳をすぎてそのスポーツをはじめても天才にはなれないけど、4歳までにはじめたらなれるかもしれない。マンガを描いたことがない人も山ほどいるし、描いたら天才になるかもしれない。天才というか、“天才状態”ですね」
こうした“天才”の定義はかっぴーさん自身の経験から実感したものであり、数字や周囲の評価にあらわれているからこそ、納得せざるを得ない。そしてそれは、“天才”ではないすべての人への希望なのだとも思う。
■かっぴー
1985年、神奈川県生まれ。漫画家。漫画原作者。株式会社なつやすみ代表。武蔵野美術大学を卒業後、大手広告代理店・東急エージェンシーにてアートディレクターとして勤務。Web制作会社のプランナーに転職後、趣味で書いた漫画『フェイスブックポリス』がSNSで拡散され話題に。2016年に漫画家として独立。リメイク版『左ききのエレン』(『少年ジャンプ+』)、『アントレース』(『ジャンプスクエア』)、『15分の少女たちーアイドルのつくりかたー』(『ビッグコミックスピリッツ』)、『晴天のデルタブイ』(『LINEマンガ』・『eBookJapaN』)の原作を担当。現在は『note』で『左ききのエレンDOPE』、『WEB UOMO』で『柳さん ごはんですよ』を連載中。また、複数の新連載漫画と原作版『左ききのエレン』のアニメ化も控えている。