「天才になれなかった全ての人へ」というキャッチコピーで一躍話題となった漫画『左ききのエレン』。作者のかっぴー自身も「天才」を意識しながらもがいた過去がある。かっぴーさんが「ここから、人生が始まった」とまで話す、THE CHANGE、人生の転機とは――。【第1回/全5回】

かっぴー 編集部撮影

 東京・目黒の雑居ビルを前に取材班は迷っていた。ほんとうにこの場所に、この日の取材のために借りたレンタル会議室があるのか、と。「え…こんなところにありますかねえ」「いやあ…どうでしょう…でも住所はこの辺だし」と、もたもたするわれわれに喝を入れるように「いや、こっちですね」と、さっそうと目的地を見据えてビルの階段を登るのは、漫画家のかっぴーさん。

 その判断力にあやかるようにかっぴーさんの背中を追うと、いままでの迷いはなんだったのかと思うほど、あっさりと目的地についてしまった。

 話を聞く前からわかってしまった。こういう人だからこそ、売れるべくして売れたのだと。

 2015年にそれまで勤務していたWeb制作会社を辞め、2016年3月より『cakes(現・note)』で連載を開始した漫画『左ききのエレン』は、2017年に『少年ジャンプ+』でリメイク版(作画:nifuni)の連載がはじまると、2019年には神尾楓珠さんと池田エライザさんのダブル主演でテレビドラマ化。2023年4月には、シリーズ累計300万部を突破、原作版のアニメ化も控えている。