「憧れの“あの人”が読んでくれている」かっぴーが目を疑った瞬間とは?

 広告代理店のクリエイターである主人公が成長していく、という大筋の作品である『左利きのエレン』だが、『cakes』で描きはじめてしばらくは、ヒットの気配すらなかったという。当時を振り返って、かっぴーさんは「無風だった」と明かす。

「ずっと、誰が読んでくれているのかわからないみたいな感じだったんです。一応『cakes』内でのランキングは上位でしたが、なんの意味もなくて、ただただ無風。リターンは、ほんとうに遅れてやってきたんですよ」

 反響が届くようになったのは、第1部の半分をすぎたころ。描きはじめて1年が経過していた。

「主人公が広告代理店勤務だったので、業界の人から感想が届くようになって。ずっと憧れていた糸井重里さんも読んでくれていることがわかって……。それはもう目を疑いました」

 かっぴーさん自身も、新卒で広告代理店に6年ほど勤務している。『エレン』の主人公は、凡人であることを自覚しもがく広告代理店勤務の新人デザイナーと、社会不適合な一面がある天才アーティスト。そしてプロデューサーとしての手腕を発揮する打算的な秀才。そのほか、広告代理店で働くさまざまな部署の仕事ぶりや葛藤、醍醐味を、リアリティたっぷりに描く。業界人に刺さるのは誰の目にも明らかだった。

「特に、インタビュー全部読んでいるくらい憧れているスーパークリエイターがいるんですが、その人がTwitterで“来年はかっぴーの弟子になろうと思う”みたいなことを書いてくれて。そのあたりからですね。“やっぱりこれじゃん! 力が伝わっている感じがしたもん! やっぱり進んでいるんだ!”と、確信したのは」