僕はすべてが平均点なんです

「僕はすべてが平均点なんです。器用ではあるけど、突出してできることもなければ、全然ダメなこともなくて。学生時代の成績もオール3、みたいな。周りから“君は器用貧乏だね”“できるけど面白みがないね”と言われたりね。だから“おもしろいと言われたい”というのも、そういうところから来ているんだと思います」

寺脇康文 撮影/川しまゆうこ

 そうしたコンプレックスが自身の武器だと思えるようになったのは、俳優仲間である戸田恵子さんの、こんなエールだったという。

「貧乏でもなんでも、器用なんだから、不器用よりいいじゃない。専門店は建てられないかもしれないけど、いろんなものが置いてあるデパートになればいいんだから」

ーーすてきな言葉ですね。戸田恵子さんと共演したときに言われたんでしょうか。

「戸田さんと高橋克実さんと3人で仲良しなんですけど、飲んでる席で言ってくれました。この言葉のおかげで、ずいぶん助かりましたよ」

 気づけばインタビューの終了時間を数十分もすぎていた。しかし、寺脇さんは「こうやって話すことで、自分で自分の考えを再確認できるから、こういう時間って意味があるんですよね」と、時間を気にするスタッフを気遣うように、やさしく語りかける。

「今日のこの時間も意味があるし、悲しいことも含めて、意味のないことはないと思うんですよね。“あの出来事があってよかった”と思えるときがくるはずだ。そう思って生きています」

 そう話し終えた寺脇さんは身を乗り出し「ありがとうございました!」と、太陽のようなエネルギーを宿した声を残して、取材部屋を後にした。

■寺脇康文(てらわき・やすふみ)
1962年2月25日生まれ、大阪府出身。1984年に三宅裕司主宰の劇団『スーパー・エキセントリック・シアター』へ入団し、1994年に岸谷五朗と共に退団後、演劇ユニット『地球ゴージャス』を結成。1996年4月から『王様のブランチ』(TBS系)の初代総合司会を10年間務める。2000年から2008年まで『相棒』(テレビ朝日系)で警視庁特命係の刑事・亀山薫役を務め、その演技が評価され主演・水谷豊と共に第16回橋田賞俳優部門を受賞。2022年10月12日放送の『相棒season21』で14年ぶりに「5代目」相棒として復帰。