サッカー界を代表する選手のひとりだった鈴木啓太さん。浦和レッズのMFとして活躍し、オシム監督率いる日本代表では全試合に出場。2015年に引退後は、研究開発型のベンチャー企業の経営者に転身。多数のテレビ番組やイベント、YouTubeにも出演する。多方面で活躍する鈴木さんの「THE CHANGE」を深堀りした。【第2回/全5回】

鈴木啓太 撮影/冨田望

 浦和レッズ一筋に16年。2015年に惜しまれつつ、引退したが、決断をする1つのきっかけはファンからのメッセージだったという。

「2014年のシーズン終了時に現役を続けるのは、残り1年と決めていたんです。前々から心臓の調子がよくない。不整脈がなかなか治らない。体がかつてのようには動かない。時々出場するものの、100%の力を出せない。もどかしかった。その悔しさは、なにものにも代えがたい。自分の持っている力をすべて出し切ることに、プロとしての誇りがあったんです。

 15年の秋に僕のSNSにファンから、あるメッセージが書き込まれていました。“どこのチームに移籍しても、応援するよ”。これを目にした時、とてもありがたかったのですが、引退すべきだなと悟ったんです。その頃、ほかのチームからオファーが来ていたから、現役を続けることはできたのかもしれない。

 だけど、僕は下手は下手なりにいつも全力を出してきた。その姿を観たファンの方が何かを感じ、声援をおくってくれていたんじゃないかなと思う。子どもの頃からプロに入ることを夢見てきましたが、実際に入れる力はなかったのかもしれません。だからこそ、常に100%を目指し、力を振り絞った。それができないならば、浦和レッズにしろ、ほかのチームにしろ、サッカーを続ける資格はないと思ったんです」