「ひとりでくたばったらそれまで、と思っていましたが、その時の僕は、生きているという実感があった気がする」

 そうしてぐるぐる考える東出さんだからこそ、山にこもっての狩猟生活をスタートさせ、続いているのだろう。

――いずれにしても、死について以前より意識するようになったということですか。

「そうですね。危険の中に生きているという実感を得られるんです。怖いですけど。でも逆に、たとえば今回の新型コロナというのは、非常に分かりやすい社会問題でもあったなと思っていて。安心安全のために自粛警察が現れたり、濃厚接触といって人との接触を過度に否定したり、他者に対して排他的になったり。こうあらねばならないといって、みんなが息苦しさを感じていった」

 ――新型コロナの時期に、社会や自分自身を見つめた人は多いでしょうね。。

「僕は山でひとりでした。山にだってコロナウィルスがいるのかもわからないし、そこでかかってひとりでくたばったらそれまでだな、と思っていましたが、その時の僕は、都会にいるときよりもむしろ自由で、むしろ生きているという実感があった気がするんですよね。今のほうが難しいかもしれませんね。なんか、生きるってなんだろうなって」

 山での狩猟生活と俳優業との双方を続けているからこそ、東出さんはぐるぐると悩み続けているのかもしれない。自身にとっては苦しい作業かもしれない。しかし、最近の作品を観るに、俳優・東出昌大の深みが増していることは間違いない。

■東出昌大(ひがしで・まさひろ)
1988年2月1日生まれ、埼玉県出身。高校時代にメンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得。2006年から2011年までパリ・コレクションにモデルとして出演。2012年の映画デビュー作『桐島、部活やめるってよ』から俳優に転身。2013年に出演したNHK朝ドラ『ごちそうさん』のヒロインの夫役でブレイク。『聖の青春』『菊とギロチン』などで評価され『コンフィデンスマンJP』などでも人気を博すも、2020年、私生活のスキャンダルで公私ともに影響を受け、フリーランスとなる。現在、2023年4本目の公開作となる、ニヒルな“ヒモ”男を好演する偶像劇『コーポ・ア・コーポ』が公開中。関東近郊の山小屋で自給自足の生活を送っているが、2024年もその狩猟生活を追ったドキュメンタリー『WILL』を含め、すでに3本の映画が待機している。