他の演者さんは、ストーリーがあってすごいんです

カシュー「ルールは各国違うし、アメリカでも毎年変わるんですが、この年は1、2回戦は審査員とスタッフさんが合否を決めて、準々決勝は生放送で視聴者投票でした。日本人は、たとえばウエスPさんやGONZOさんたちも、視聴者投票になるとなかなか難しいんです」

ーーそこに壁があるんですね。

藤原「他の演者さんは、ストーリーがあってすごいんです。家族を亡くしたけどシンガーになりたいとか」

カシュー「内戦地帯からやってきたマジシャンの青年が、アメリカでマジシャンとして成功したから家族もこっちに呼びたいと。で、マジックの最後に『PEACE』という文字が出る、みたいな」

藤原「そういう人たちと、デブの芸人が戦う。勝てないですよ」

カシュー「逆に、勝ち上がることでひどいコメントが来ますもんね。“あいつらはなんで受かるんだ”とか。英語なので最初はわからないんですけど、うんこや人が吐いている顔の絵文字がつくので、たぶん悪口を言っているんだろうなってわかるんです」

 2009年に『ブリテンズ・ゴット・タレント』に出場し、一夜にして世界的歌姫となったスーザン・ボイルも、中傷に耐えかね決勝戦の辞退を検討したというエピソードもある。しかも彼女が対峙したのはSNSではなく、テレビや新聞などに書かれたものだった。

カシュー「調べると、実はそういう歴史があるんだと知りました」

藤原「だから僕たちも“ストーリーを作ろうか”と話したことがあるんですよ。“どっちかの親が亡くなったことにしよう”とか」