刺激って大事なんですよね

ーーえーー! それはすごいですね!

「それは、私が一緒にいなかった時間での出来事で。それを聞いて私、正直、ボケたのかなと思いました。だって、急にこんなにいっぱいしゃべっちゃうし、現代では使わない単語、たとえば“閉門”とかが出てくるから、ほんとうのことではないのかもしれない、と」

 あまりの劇的変化をすんなりと受け入れられなかった市毛さんは、そのとき母に同行していた友人に「ボケちゃったかと思うくらいいっぱいしゃべったのよ」と報告した。すると、

「“それ、お母さんが言っていること全部正しいです”と教えてくれたんですよ。母は、起きたことをそのまま私に報告してくれていたんです。それはたぶん、彼女の中ですごく刺激になったから、楽しくて私に伝えたかったんですよね。“今日はこんなことにステキなことがあった”ということを人に伝えたいと思うんだ、と」

 さらに帰国後、デイサービスのスタッフも、変化にいち早く気づいた。

「母の顔を一目見て、“こんなに元気になるなら、また連れていってあげてください”と」

ーー刺激を受けることの大切さが、凝縮された話ですね。

「そう、やっぱり刺激って大事なんですよね。だから最後の最後まで車椅子で散歩に連れ出すと、目も開けないくらいだったりするんですが、かまわず“お花、咲いてるよ! 見て!”と言ったりしていました。そうやって連れていった日の夜は、ごはんをたくさん食べてくれるんです。鮮明に見えていなくても、花の匂い、色、光、外で遊ぶ子どもの声……そういったものが刺激になっているんでしょうね」