“みんなプロだ!”と圧倒されちゃって

ーーがんばろう、と思った瞬間があったのでしょうか。

村川絵梨 撮影/三浦龍司

「ほかの役者さんと会ったときです。“みんなプロだ!”と圧倒されちゃって。特に妹役の黒川芽以さんは同じ年。彼女は子役からお芝居をやっていて、ポロポロと涙を流し、泣くことができるんです。“うわあ、どうしよう……! ちゃんとしなきゃ!”と思いました」

 芝居のプロたちに気圧されて気付かされたのは「私は、素人だったんだ」ということ。現場で覚え、家で覚え、プレッシャーに押しつぶされる時間もないまま全力で前進するしかなかった。

「週末は学校にも行っていたし、ほんとうに全力で生きていました」

ーー気にしていた学校には通えたんですね!

「それがラッキーなことに、週末だけ通学して、あとはレポート提出などをする通信制に切り替えられる高校だったんです。だからみんなと同じ時期に卒業できてよかった。でも現場は学校より楽しかったから、どちらにしろよかったんです。

 やりがいがあったし、お父さんの渡辺いっけいさん、お母さんの真矢みきさん、友達の水川あさみさんや木南晴夏さん……登場人物がほんとうに現実でも同じ関係性だと勘違いするくらい、みんないい人で。つらいと思ったことはありませんでした」

 ハルカが、村川さんにもたらしたTHE CHANGEとはなんだったのか。

「女優として生きていきたい、と思ったことです。歌手から完全にシフトチェンジしちゃいました。だから『風のハルカ』以降のドラマは、それ以前とはまったく違った気持ちで出演しています」

 村川さんがハルカに息を吹き込んだのと同時に、村川さんもハルカから、新たな生を受け取ったのだ。

■村川絵梨(むらかわ・えり)
2002年、ユニット「BOYSTYLE」のメンバーとして歌手デビューしたのち、2004年に映画「ロード88 出会い路、四国へ」で主演を務め、本格的に俳優業に進出。2005年後期放送のNHK連続テレビ小説『風のハルカ』のヒロインに抜擢される。2008年放送ドラマ『ROOKIES』(TBS系)でマネージャー役を好演。ドラマ、舞台、映画と幅広く活躍している。2023年にはムロツヨシ主演のドラマ『うちの弁護士は手がかかる』(フジ系)で個性的なやり手弁護士を演じた。