「僕はそんなナルシストじゃないんですけどね」
――2作目ということで、どうしても慣れや、逆に何かを付け加えてオーバーアクションになってしまいそうです。
「当初からのキャラクター設定を、キープするように意識しました。役者って、シリーズものになると、やっぱりキャラクター表現を過剰にやってしまいたくなるんですよ。そうなると、本質が見えなくなったり、キャラクターがブレたりしてしまうんです。2作目だから幅を広げようということにならないように。とにかく“維持する”というのが、一番大切なことなんじゃないかなと思ってやっていました」
――原作の作風もあると思いますが、ナルシズムや耽美な部分は、演じられる側としてはどう意識していましたか?
「耽美という部分でいうなら、そこはずっと耽美に生きてきているので、無理はないと思うんです。ナルシズムという部分で表現を求められることは基本的には、この作品ではないです。この世界は、ちょっと間違うと歌劇団風になってしまうんです。過剰にシアトリカル(演劇的)な表現になってしまうというか。一部の人にしか受け入れられない感じになってしまうので、それは最初のタイミング、1作目のときからそうだったんですけど、シアトリカルな方向でやるのかという打ち合わせもあったんです」
――そうなんですね。
「で、それは違うと。あくまで演技はリアルで、耽美な世界観を真剣にやるということだったので、いわゆるナルシズムを突き詰めたシアトリカル感が出ないようにするというのが、演技の方向性なんです。なので、そういった意味では、僕自身が、今回の役をナルシスティックにやっているという意識はないんです。もしそれでも観ている方がナルシスト感が出ていると感じられているのだとしたら、たぶんそれは演技ではなくて、僕のナルシスティックな部分が勝手に出ちゃってるのかなというだけの話だと思うんですけど。あ、でも僕はそんなナルシストじゃないんですけどね」
「ずっと耽美に生きてきている」という言葉を、表情ひとつ変えずに、さらっと口にするGACKTさんの姿が妙にいい。
■GACKT
1973年7月4日生まれ。バンド活動を経て、99年にソロになる。ミュージシャンという枠にとらわれず、“表現者”として活躍。03年公開の『MOON CHILD』では原作・脚本・主演として作品に関わった。07年の大河ドラマ「風林火山」(NHK)で上杉謙信を演じ、大きな注目と支持を集めた。09年より出演のバラエティ番組「芸能人格付けチェック」では圧倒的な活躍で、老若男女にGACKTの一流ぶりを見せつけることとなった。2019年、二階堂ふみとのW主演による映画『翔んで埼玉』が大ヒット。第43回日本アカデミー賞で優秀主演男優賞を受賞。2023年、続編『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』が公開された。
映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』
原作:魔夜峰央
監督:武内英樹
脚本:徳永友一
音楽:Face 2 fAKE
出演:GACKT、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助 ほか
(C) 2023 映画「翔んで埼玉」製作委員会
配給:東映
ヘアメイク/タナベコウタ スタイリスト/Rockey