芸人・永野の異質さはよく知られるところだろう。「ラッセンが好き」で世に出て、テレビを席巻し、現在でもYouTube、ラジオなど多方面で活躍している。繰り出される強烈なフレーズ、モノマネの意味を本当に理解できる人はどれだけいるのだろうか。それでも笑ってしまう。
 かつて、朝の情報番組で俳優を本気でビンタして警察沙汰になり、テレビ局を出禁になったこともある。著書が2冊あり、音楽についての該博な知識と愛情、そして分析は驚くべき深さで読む人を圧倒する。「妻や子どもの写真をスマホの待ち受けにしてるやつといい仕事できないですよ」と語る永野の人生が変わった「THE CHANGE」とはなんなのかーー。

撮影/川しまゆうこ

「孤高のカルト芸人」と呼ばれる永野さんだが、2023年2月に上梓した著書『オルタナティブ』(リットーミュージック)では、愛してやまないニルヴァーナ、U2、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ、BUCK-TICK、D.Oといった音楽から、『JOKER』、『ダークナイト』オリバー・ストーン、『稲村ジェーン』といった映画を論じ、そこから自身の半生を語っている。唯一無二といっていい著作が、出版に至った経緯はどのようなものだったのか。

「前回、本を出させてもらって(2021年の『僕はロックなんか聴いてきた 〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き! 〜』)、もう一回出しませんか、と言われて。ロックだけじゃなくて、映画とかも含めて、と言われて。

 最初はやっぱ、インパクトがあったと思うんですよ。芸人“ラッセンの人”がけっこうしゃべんだーっ、ていうギャップもあっただろうし、この人こういうことやるんだ、って。2度目はなんでしょうね、みたいな感じだったんですよ。

 でも2回目は……。音楽ってなんか語れるじゃないですか。パーソナルなものだし。でも、映画って作品だから、そんななんか話すこともないな、と思って。でも、その時に、これこんな機会ないぞ、と思ったんですよ。自叙伝というか、もうなんか好きに過去のこととか、全部書く本にしちゃえ、と思って」