「人前に出る人が幸せになるというのはずうずうしいし、やっぱりイラつく」

ーーしっかり嫌われるのは、すごいことだと思います。以前、永野さんは「携帯の壁紙に子どもと奥さん浮かぶやつといい仕事できないんですよ」と話していて、本の中では「幸せな人間に人を笑わせることはできない」と。

「本当に、絶対できないと思ってて、なんていうのか、なんか図々しいって思っちゃうんですよ。ああいうやつら。

 一応、世に出る人っていうのは、それだけの身を削ってって、あると思うんですよ。自分だけ幸せになって、家族もいて、大事なものあって、みんなを笑わせたいって、いっぺんには無理だよって本当に思うんです。古いかもしれないけど、自分はやっぱり捨てたものばっかりで。

 ガチモンの人って、いち男性になったらモテなそうじゃないですか。BUCK-TICK(※1987年デビューの日本のロックバンド。のちのビジュアル系バンドに多大な影響を与えた)って、モテないじゃないですか。飲み会で。ちょっとしたバンドはモテると思うんですよ。でも、BUCK-TICKは絶対モテないと思う。それは神々しさと引き換えに。そういう犠牲があるから、そういうのがマジで大事。

 人前に出る人が幸せになるというのはずうずうしいし、やっぱりイラつく、イラつきますね」

 その言葉からは、あらためて芸人としての覚悟が伝わってくるように思える。。

■プロフィール
永野 ながの
1974年9月2日生まれ。宮崎県出身。AB型。1995年にピン芸人としてデビュー。「ゴッホとピカソに捧げる歌」などのシュールなネタで注目を集める。ロックフリークとしても知られ、愛情と知識で語られる音楽トークは人気に。GLAYのライブにゲスト出演し、俳優・斎藤工とは映画をともに製作するなど華麗な交流がある。2021年に『僕はロックなんか聴いてきた 〜ゴッホより普通にニルヴァーナが好き! 〜』、2023年に『オルタナティブ』(ともにリットーミュージック)を出版