あえて『Get Along Together』を歌わない時期も

ーー私の中学校では、校門が閉まる完全下校の時間に、『Get Along Together』が流れていました。だから1993年前後にあの学校に通っていた全校生徒に、山根さんの曲が刷り込まれていたんです。

「そんなことがあったんですか。『蛍の光』みたいな役割ですよね。あの曲、そういうイメージありますもんねえ」

編集者「僕らの世代だと、友達の結婚式が3週連続であった場合、そのすべてで『Get~』が歌われていましたよ」

「そうなんですか。そんなにみなさんに知ってもらっていたという自覚はないんですけど、なんなんでしょうねえ……」

ーーカラオケ印税も相当だったのでは。

「どうなんでしょう。そんなでもないんじゃないですかねえ」

 一方で、『Get~』の存在が葛藤の元になったこともあった。

「自分の中ではほんとうに大切にしたい曲ではあるんですが、一時期、30代くらいのときですね、“歌いすぎて、いいや”という感じはありました。必ず“この曲を歌ってください”と言われるんですよ。じゃなくて、いろいろ曲はあるんですよ。自分の中で聴いてもらいたい曲はいっぱいあって、ツアーのとき、あえて『Get~』を歌わない時期もありました」

 そんな自分を振り返り「なんか……アホですね」と漏らす。

「ちがう自分を見てほしいところもあったんですよね。曲、ほんとうにいっぱいあるんですよ。でも、いまは全然そんなことないです。みなさんが歌ってほしい曲であれば、歌います」

ーー求められるから歌っているのに、「その曲だけ?」と見られたことも?

「そうです。“歌って”と頼まれるのに、“それしかない”みたいな感じで言われると、ちがうよな……というか」

ーー『Get~』きっかけで、バラード路線を強化したように思います。

「それもありました。レコード会社から“デビューから3曲はバラードで”と。“えぇ~……”と思いました。正直、バラードメインで歌うほど、歌も上手くなかったですしね。結構、雰囲気だけなんですよ。だからね、プレッシャーなんですよね」

「雰囲気だけ、にはまったく思えません」と記者が言うと、「いやいや、雰囲気雰囲気」と、気さくすぎる笑顔で答える山根さんは、どこまでいっても等身大だ。国民に愛される曲の生みの親もまた、愛すべき存在だった。

■山根康広(やまね・やすひろ)
1966年8月16日生まれ、大阪府出身。中学生の頃、70年代のアメリカ・イギリスの洋楽ロックに強い影響を受ける。1993年、日本クラウンよりデビュー。デビュー曲『Get Along Together』が180万枚を超えるミリオンセラーを記録。90年代、披露宴ソングとして全国の結婚式で歌われ、現在まで名曲として語り継がれている。

■山根康広(やまね・やすひろ)30年の軌跡を辿るベストアルバム
『PIECE OF LIFE~30TH ANNIVERSARY BEST ALBUM~』
定価:¥3,700
レーベル:日本クラウン株式会社
10年ぶり、通算11枚目のオリジナルアルバム
『I AM』
定価:¥3,300
レーベル:日本クラウン株式会社
●山根康広各配信サイト https://bio.to/yamaneyasuhiro
●山根康広 「Get Along Together -愛を贈りたいから-」 (Official Audio) https://youtu.be/jifqX5yfiNI?si=hl75x_9TAFWaPSIb
●山根康広「WITHOUT U」アートトラック https://youtu.be/KpKalHHnHJY?si=Y2TSESi6OFnAS4gu