昨年最も顔を知られた新人俳優と言ってもいいのではないだろうか。NHK連続テレビ小説『ブギウギ』で、趣里演じる福来スズ子の弟・六郎として愛された黒崎煌代。2022年に開催されたオーディションに合格して芸能界入りし、2023年に入って俳優デビューを飾った。そのテレビドラマデビューが朝ドラという強運と、決して運だけではないダイヤの原石であることは、すでに『ブギウギ』を見ていた視聴者には証明済みだ。これからが楽しみでしかない黒崎さん。眩しい21歳のTHE CHANGEとはーー。【第1回/全4回】
目の前に颯爽と現れた好青年。一瞬、『ブギウギ』の六郎とは本気で重ならなかった。退場時の坊主頭と異なることもあるが、まとうオーラがまるで違う。髪の毛が伸びたから、だけではない。完全な別人、精悍な青年である。「全く六郎じゃない。頭も坊主じゃないですね」とつい言葉に出てしまった。照れて笑いながら「そうですね。少し前まで坊主だったはずですからね」と答える落ち着いた低音ボイスに、「そういえば、六郎も声自体は低かったのか」とイメージとの乖離に驚かされる。
家族の物語がとても心に響いた『ブギウギ』の大阪パート。主人公の福来スズ子は大阪から東京へと出て行ったが、スズ子の弟を演じて一躍視聴者に“六郎”というキャラクターを生きた人物として刻んだ黒崎さんも、兵庫県から上京し、芸能界の道を歩んでいる。
きっかけは2022年に行われたレプロエンタテインメント30周年企画「主役オーディション」に、約5000人の中から選ばれたことだった。
「ビックリしました。最初は普通に応募して、1次2次3次と、渡された台本の芝居を面接で演じました。そこから最終オーディションとしてワークショップ審査があって、1か月にわたってワークショップを受けさせてもらったんです」
――約1か月間ワークショップを受けながら、それ自体がオーディションになっているんですか。
「そうなんです。楽しかったです。役者のオーディションですが、面接の時やワークショップの期間に人柄も見られていたのかなと思います。社員さんと、“今日のワークショップはどうでしたか?”と振り返るような時間もあったので」
――合格はどのように伝えられたのでしょう。
「横浜の中華街にいたときに電話がかかってきまして。受けたら合格だと。本当にビックリしました。正直、ワークショップを受けること自体が目的のところがあったんです。もちろん受かれば嬉しいなという気持ちもありましたけど、“楽しいな、勉強になるな。役者ってこういうことなんだ”で、満足していたところもありました。だからビックリしました。でも“やったー!”とも。だって1年間、ワークショップを受けられるわけですから」