オーディションは合格してから事後報告

　オーディションの合格者には、事務所契約とともに、ワークショップを１年間無料で受けられる特典がある。

「大きいです。その無料期間はもう切れましたけどね。なので私は今、自腹でワークショップに行ってます（笑）」。余談だが、現在２１歳の現役大学生の黒崎さんの１人称は“私”である。

　そもそも黒崎さんは作り手側に興味があり、勉強もしていた。その上で、出る側のことも知っておきたいと考え、オーディションを受けたという。それが１年間のレッスンを通じてたくさんのことを知り、さらに映画デビュー、ドラマデビューと縁がつながっていったのだが、ここまで話を聞いてきて、驚きの事実が発覚した。

「２０２３年の夏頃に、両親に“就職活動はしない。役者としてやっていく”と伝えたんです。許可はもらいましたが、“その代わり、絶対にお金は払わないから自分でなんとかしろ”と父に言われました。そもそもオーディションのことも言っていなくて、合格してから事後報告でした」

――え！？

「受かってからの報告だったんです。自分で応募して、１次２次３次と受けて、最終のワークショップに通って。最終的に合格したので、“レプロエンタテインメントという芸能事務所に所属しました”と、初めて報告したんです」

――映画作りに興味があることは、以前から知っていたと思いますけど、出る側に興味を持っていて、しかも「事務所合格」まで進んでいたとは。

「“出る側？”となって、ビックリしてました。そんな素振りは一切見せたことがなかったので。そこから父が事務所について調べて（笑）。でも、“もう決めました”という感じで伝えたので」

――相談ではなかったんですね。

「もともとウチは放任主義的なところがあって、やりたいことをやらせてくれる代わりに、“自分で責任を取るように”と教えられてきました。とはいえ、正直、最初は少し渋ってました。両親としては、おそらく大学生活でのサークルの感じで考えていたんじゃないかと思います。それが、割とすぐに『さよなら ほやマン』が決まって、“え？ 映画に出るの？”と」