身にまとうのは黒パン1枚。あとは奇声と表情を武器に爆笑をさらうーー。一度見たら忘れられない強烈なインパクトを誇る芸人・ハリウッドザコシショウ。いまや賞レース審査員を務めるほどだが、そこに至るまでには数多くの「THE CHANGE」があったーー。【第2回/全6回】 

ハリウッドザコシショウ 撮影/冨田望

 人生が大きく変わった「THE CHANGE」とはなんですか? と尋ねると、ザコシショウさんは、即答した。 

「やっぱり、2016年の『R-1ぐらんぷり』でしょう」

『R-1ぐらんぷり』(※2021年より『R-1グランプリ』)は、2002年から現在までフジテレビ系で放送されている、ピン芸日本一を決めるお笑い賞レース。2016年大会で、ザコシショウさんは、出場者数3786人の中から見事、優勝を勝ち取った。 
「あの優勝がなければ、今回のインタビューだって絶対なかったし、ダウンタウン松本人志さんのAmazonオリジナル番組『ドキュメンタル』にも、絶対に出られなかった。本当に、軌道に乗ったんですよ。有名な番組に出るための切符をもらえたというか、肩書きを手に入れたというか」 

 ただ、そこに至るまでの道のりは、紆余曲折があったようだ。 

「優勝する前の年までは、どんなにウケていても、毎回3回戦で落とされていたんです。それで思うところがあって、衣装を変えてみたんです。もともと、タモリさんのイグアナとかの形態模写の芸へのオマージュで、白ブリーフ一丁でネタをしてたんですけど、それをやめて2016年に黒パンツに変えた。そしたら、その年に決勝へ行けて、そのまま優勝です」 

――……衣装ひとつでそこまで変わりますか?

「ブリーフ一丁は、ちょっと見た目がいやらしかったし、テレビ向けじゃなかったんじゃないですか(笑)。でも、2016年は最高のタイミングでした。その前年は、自分のネタが仕上がりきっていなかったし、逆に、2017年は、裸芸のアキラ100%がめちゃくちゃウケて優勝していたから、きつかっただろうなって。
 僕個人の意見ですけど、賞レースで惜しくも優勝を逃した人って、翌年はそれ以上のネタを用意しないと絶対に優勝できないと思うんです。だから、2016年に1発で優勝できたのは、最高の形でした。
 その点で言うと『キングオブコント 2023』(TBS系)で、サルゴリラが優勝したのはよかったですよね。大会前まで目立ってなくて、世間によく知られていない状態でぱっと出て、ぱっと優勝する。あれはかっこいい」