丹波哲郎との思い出
その後、新国劇という劇団に入り、舞台に立っているうちに『顎十郎捕物帳』というTBSの時代劇ドラマの主役に抜擢され、テレビ俳優として忙しい日々を送ることになりました。
1975年には『Gメン』(TBS系)シリーズがスタート。77年からはレギュラーになり、同時進行で萬屋(錦之介)さんと『破れ新九郎』(テレビ朝日系)という時代劇もやっていたから、台詞を覚えるのもひと苦労で……。実は、『Gメン』では丹波(哲郎)さんと、体に台詞を書いた紙を張りあったりしていたんですよ。1枚で収まらない長台詞だと、丹波さんが「途中で張り替えろ」って言うんです。でも、どうしても肩が揺れちゃって、うまくできなくて叱られたり(笑)。
今考えると、すごい時代ですが、『Gメン』は年に2回、海外ロケがあったんです。そのロケでも丹波さんとの思い出深い出来事があってね。パリに行ったとき、丹波さんが「おい、豪。ルーブルに行くぞ」って言うんです。実際に着いたら、丹波さんがひとりでどんどん先に行って、戻ってくるなり「豪、帰るぞ。ダメだここは、絵ばっかりでつまらん」って。ルーブル“美術館”に何があると思っていたんでしょうね(笑)。
わかばやし・ごう
1939年9月5日生まれ。長崎県出身。1965年、劇団「新国劇」に入団し、島田正吾に師事。68年に『顎十郎捕物帳』(TBS系)でドラマデビューし、以降、多くのドラマ、映画、舞台で活躍。主な出演作はドラマ『Gメン』シリーズ、『十津川警部』シリーズ(TBS系)、『赤い霊柩車』シリーズ(フジテレビ系)、NHK大河ドラマ『徳川家康』『独眼竜政宗』『翔ぶが如く』、映画『七人の秘書 THE MOVIE』『仕掛人・藤枝梅安 第一作』など。