忘れられない2010年の連勝記録
そして、忘れることができないのが、横綱として絶好調だった2010年九州場所での稀勢の里(当時、前頭)との一戦。
白鵬は、みずからの名前の由来となった、横綱・大鵬(のち大鵬親方=故人)、そして昭和10~20年代、「角聖」と称された、横綱・双葉山を尊敬していた。
双葉山は69連勝、大鵬は45連勝という大記録を持っている。
「角界の偉大な先輩と接し、歴史資料を読み解く中で、次第に“横綱は勝つことで存在感を示さなければならない”と考えるようになったんです。10年初場所限りで、朝青龍関が引退したことも大きかったですね」
初場所14日目に大関・琴欧洲から白星、千秋楽は結果的に朝青龍最後の相撲となった一番にも勝利(優勝は朝青龍)して以来、春場所、全勝優勝(13回目)。夏場所も全勝優勝を果たして、翌名古屋場所13日目は大鵬の持つ45連勝に並び、翌14日目、日馬富士を破り、46連勝として、全勝優勝。勢いは秋場所も止まらず、全勝優勝を飾り、62連勝まで記録を伸ばした。
九州場所で6日目まで連勝すれば、双葉山の69連勝に並ぶ。誰も破ることができないと思われた大記録が更新される瞬間は迫っていた。
取材・文/武田葉月
■宮城野 翔(みやぎの・しょう)
本名:白鵬 翔(はくほう・しょう)1985年3月11日 モンゴル ウランバートル出身。第69代横綱。2010年初場所から63連勝を記録するなど輝かしい戦績を残す。2021年に現役引退。2019年に日本国籍を取得し、現在は年寄・宮城野。生涯戦歴 1187勝247敗253休。受賞歴 優勝45回/殊勲賞3回/敢闘賞1回/技能賞2回