映画祭が始まった当初は「手作り感満載」だった
映画祭は2023年で30回目。ちなみに『アンパンマン』は、今年で36周年を迎えるが、「この映画祭も、誰かが諦めなければ、ちゃんと実直に続けていけば、それ以上続くかもしれない」と期待を込める。
ーー映画祭に関わってから、気づいたことはありますか?
「ちょっとマイナスイメージになってしまうかもしれませんが、日本はどうしても海外に比べると、子ども向け作品の文化レベルが遅れているように思います。海外には、まっすぐ子どもに向けて作品を作るスタッフの人がたくさんいる。それはなぜかというと、バックアップしてもらっているからなんです。みんな生活が苦しかったらそんなことしていられないから」
『キネコ国際映画祭』も開始当初は「手作り感満載」だったというが、規模が大きくなったのは、「バックアップしてくれるスポンサーのみなさんがいらっしゃって、地味にコツコツやってきた」からだと話す。
「“秋になったら二子玉川で子どもの映画祭をやっているよ”ということを、みんなに知ってもらえたらいいなあと思います。これは子どもが自主的に知ることができるものではないので、やっぱり大人が誘わないと進まない話なんですよね」
ーーこういった作品に触れた子どもは、触れる前後でどんな変化があるのでしょう。
「来てくれたご子どもから手紙をもらったりするとね、“お父さんが泣いているところを見たことがなかったけど、映画を観てお父さんが泣いて、びっくりしました”と書いてあったことがありました。子どもにとってセンセーショナルな変化ですよね」
子どもの感情が揺さぶられるのを見ると、「私たちも豊かになる。だから、続けているんです」と、戸田さんは晴れやかな表情で話した。
戸田恵子(とだ・けいこ)
1957年9月12日生まれ、愛知県出身。1975年に「あゆ朱美」の芸名でアイドル演歌歌手デビュー。演出家の野沢那智に声をかけられ77年より劇団・薔薇座に入団。いくつものミュージカル作品で賞を受賞する。声優活動のスタートは79年『機動戦士ガンダム』マチルダ・アジャン役から。アニメ『ゲゲゲの鬼太郎』(三作目)の鬼太郎、『キャッツ・アイ』の瞳、『きかんしゃトーマス』のトーマス、『それいけ!アンパンマン』のアンパンマンで国民的声優に。洋画の吹き替えではジュリア・ロバーツやジョディ・フォスターでおなじみ。1997年に三谷幸喜脚本作品『総理と呼ばないで』(フジテレビ系)で連続ドラマデビュー。名バイプレイヤーとして毎クール活躍。昨年は『うちの弁護士は手がかかる』(フジテレビ)を含む3作品に出演した。