“体を張って楽しませる”のは世界共通の“お笑い”
もともと、映画『ピンク・パンサー』シリーズや香港映画『ミスター・ブー』のホイ3兄弟ものが大好きで、コメディを通して何かを演じるということにすごく憧れていたんです。
特に『ピンク〜』のピーター・セラーズふんするクルーゾー警部は、僕にとっての初めて見たダメな大人でもあって印象深いんです(笑)。この2つの作品に共通しているのは“体を張って楽しませる”ということ。それは子どもにも分かりやすいし、国境を越えて人を選ばない、言葉の違いも関係ない、つまりは世界共通の“お笑い”で、それを自分は芸人とは違う俳優というフィルターを通して表現してみたいなって思っていたんです。
それに、僕からすると、みんなが「この映画、面白くないね」って言っても、ひとつでも自分が好きなシーンがあればOK。ハードル低いですよね(笑)。僕自身、評価の低い作品でも、「この映画で救われた」みたいな経験があるんです。そこに映画やドラマとかの作品の持つ力があると信じています。だから、どんな役でも誰かに喜んでもらえるんだったらやりがいのある役に変わるんだなって思っているんです。
俳優として大きなターニングポイントとなったのは、映画『みんなのいえ』(01年)ですね。脚本家でも有名な三谷幸喜さんが監督されたコメディです。なんで僕が抜擢されたのかは分かりません。当時、僕が番組のドッキリで泣いてる姿を見た三谷さんが、声をかけてくださったらしいんですが、ほんとかどうかは分かりません(笑)。
それまでは、本格的なお芝居の経験はほぼゼロでした。妻役の八木亜希子さんはフジテレビを退社したばっかりの頃で、同じく演技経験がなかったので、クランクインの2か月前から、特別に稽古をつけてもらったんです。
それまでは自分たちで考えたコントしかやってこなかったから、誰か他人から演出を受けるというのはすごく新鮮で、いろんなことを教えていただいたんです。今振り返ると、その2か月間はすごく贅沢だったなって思いますし、同時にコントとは違う芝居をやることの面白さに気づかされた時間でもあったんですね。
田中直樹 たなか・なおき
1971年4月26日、大阪府生まれ。O型。T181。1992年、遠藤章造とお笑いコンビ『ココリコ』を結成しデビュー。バラエティ番組を中心に活動する一方で、俳優として多くのドラマや映画に出演を果たす。2001年に公開された出演映画『みんなのいえ』での演技で第25回日本アカデミー賞新人俳優賞・話題賞を受賞。
■ドラマ『ジャンヌの裁き』(テレビ東京系)
少女漫画家でシングルファーザーである越前剛太郎(玉木宏)は検察審査員に任命される。検察が不起訴処分とした事件を市民の立場から審議することになった越前剛太郎は悪戦苦闘しながらも事件の真相に迫る。そんな越前剛太郎の前に東京地検特捜部部長の桧山卯之助(田中直樹)が立ち塞がる……。
ⓒ「ジャンヌの裁き」製作委員会