「今、六本木で一番元気いいのがおまえだから」
おかげさまで売れたんですけど、5年たった頃かな、「ここらで潮時かな」って感じて、グループを辞めたんです。ちょうど、そのちょっと前から、俳優の仕事をいただいていて、ドラマの『とんぼ』で本格的に俳優業を始めたんです。
どうせ演じるなら、ヤクザか特攻隊が良いなってマネージャーには言っていたけど、「そんなのないよ!」って言われていたんです。時代がトレンディドラマの全盛期で、あの東映すらも任侠映画を作らなくなった頃で……。でも、『とんぼ』に出させてもらった直後に高橋伴明監督から、若い鉄砲玉の任侠モノを撮るけど出ないかって誘われたんです。最高のタイミングですよね。
でも、当時は俳優の仕事なんて『とんぼ』しかやってなかったから、俺を誘ってくれるのが不思議で。だから、高橋監督に「なんで自分なんですか」って尋ねたんです。「今、六本木で一番元気いいのがおまえだから」って言われましたよ(笑)。いやー、勢いよく飲んでてよかったですよ。うれしかったなあ。
高橋監督とは、そのときの『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ〜』を含めて3本続けて撮って、それでⅤシネマ路線が一気に走り出して、俺も任侠モノに出まくったんだよね。
それから、印象深い作品といえば、『ゼブラーマン』(2004年)かな。主演作100本目になったときに、三池崇史監督から「それじゃ脚本はクドカン(宮藤官九郎)でいきましょう」って話になってね。だけど、超売れっ子のクドカンに普通に当たってもダメだと思って、クドカンと面識があったうちのカミさん経由で葉書に想いをしたためて直訴したんです。そうしたら、「面白そう」って返事がきて、『ゼブラーマン』の座組が出来上がったんです。
哀川翔 あいかわ・しょう
1961年5月24日、徳島県生まれ。AB型。84年、一世風靡セピアの一員として『前略、道の上より』でレコードデビュー。86年、『青の情景(シーン)』でソロデビューを果たす。88年、ドラマ『とんぼ』で注目を集め、90年、Vシネマ『ネオチンピラ 鉄砲玉ぴゅ~』の主人公に抜擢される。95年、映画『BAD GUY BEACH』で“あいかわ翔”名義で監督デビュー。99年、「第8回日本映画プロフェッショナル大賞」を受賞。2000年代になってからも精力的に多くのドラマ、映画に出演。近作には映画『老後の資金がありません!』『春に散る』やNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』がある。
■映画『一月の声に歓びを刻め』
2月9日(金)より全国公開。
八丈島に住む“牛飼いの誠”こと赤松誠(哀川)の元に娘の海(松本妃代)が帰省した。5年ぶりの再会で、海は身重であることに誠は気づく。しかし、誠はそのことを海になかなか問いただすことができない。そうこうしているうちに、誠は海の部屋で離婚届を見つけ……(「八丈島」編)。
脚本・監督:三島有紀子
出演:前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔ほか