アイドル黄金期「85年組」の中で支持された理由
斉藤さんの歌手デビューとなった「卒業」が発表されたのは1985年。アイドル黄金期と呼ばれる1980年代でも特に豊作と呼ばれた、いわゆる85年組だ。斉藤さんのほか、本田美奈子、松本典子、中山美穂、芳本美代子、浅香唯、南野陽子、うしろゆびさされ組、河合その子、石野陽子、佐野量子(敬称略)ら錚々たる女性アイドルが群雄割拠していた。
――斉藤さんのことを「アイドル時代から、今もずっと大好きです」という人も大勢います。
「私が支持された理由を、もし自分で分析するなら“アイドルとしてプロになりきれていなかった”ところだと思います。それが逆に支持された理由なのかなって」
――これまでのインタビューでも、“異質な自分と常に向き合ってきた”とお話されています。プロになりきれていないことを自覚しながら、そのままの自分を守り続けたんですね。そんな斉藤さんをファンも支持した。
「アイドルという自分の立ち位置に異質さをずっと抱えてきたのは正直な気持ちなんです。ただ、今思うと、当時アイドルというものをやっていてよかったなと、本当に思うんですよね。その時代の経験が、この年齢になってですけど、すごく自分の財産になっていると感じます。そして、そのことにビックリしています」
――たとえば、どんなことですか。
「現実的なこととして、今の私のお仕事に結びついています。歌にしても、アイドル時代に苦しみながら必死になってニコニコ笑ったり、腰をフリフリしながら踊ったりして歌っていたあの歌が、現在の私のライブ活動の宝物になっています。
当時、応援してくださっていた方が今も、ある程度の年齢のいった私が歌っている歌でも、当時の自分を思い出すのか。あるいは郷愁なのか、それとも今の私の表現を支持してくださっているのか分かりませんが、とにかく支えてくださって応援してくださっている。今もライブ活動を続けていることで、それを間近に感じられる機会があるので、とても励まされています」
「全然プロじゃなかった」と語る斉藤さん。人々が何をもって「アイドル」とするのかは明確ではないが、当時から「異質さを抱えたまま」の斉藤さんだからこそ、人々が恋焦がれる強烈な輝きを放ち続けているのかもしれない。
さいとう・ゆき
1966年9月10日生まれ、神奈川県出身。1984年、「少年マガジン」第3回ミスマガジンでグランプリに選ばれる。翌年、「卒業」で歌手デビュー。同年テレビドラマ『スケバン刑事』で初代・麻宮サキを演じ、一世を風靡した。1986年には連続テレビ小説『はね駒』でヒロインを務める。以降、数多くの作品に出演し、支持され続けている。近年の主な出演作に映画『記憶にございません!』『蜂蜜と遠雷』『最初の晩餐』『子供はわかってあげない』、ドラマ『大奥』(NHK)『フィクサー』(WOWOW)『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)『いちばんすきな花』(フジテレビ系)、舞台『良い子はみんなご褒美がもらえる』『メトロノーム・デュエット』など。『三度目の殺人』ではブルーリボン賞助演女優賞を受賞した。
映画『マッチング』
脚本・監督・原作:内田英治
共同脚本:宍戸英紀
主題歌:Aimer
出演:土屋太鳳、佐久間大介、金子ノブアキ、杉本哲太、斉藤由貴
(C) 2024『マッチング』製作委員会
配給:KADOKAWA
公開:2月23日(金・祝)