ターニングポイントは『M-1』敗者復活戦の日

 そもそも、お笑い自体は好きではあったんですが、明確に芸人になろうと決意したタイミングはありません。大学に入学したばかりの頃、アカペラサークルの新歓で相方と出会って話していたら、すごくお笑いに詳しかったんです。

 それで「お笑いサークルのライブを観に行かない?」と誘われて観てみたら、面白くて。それで相方と一緒にそのサークルに入ったんですよ。そこからは大学はそっちのけでお笑いライブにたくさん通いましたね。

 先の『M-1』敗者復活戦の日が、ちょうど期末テストの日程と重なって、朝に試験を受けてから漫才しに行ったんです。

 試験も手につかず散々で、単位も足りずに退学になりました。一度退学して再入学してまた退学……。計7年も通ったのですが、最終学歴は高卒です(笑)。

 でも、ちょうどそのタイミングでラランドとしてのお仕事が増えていったので結果、今があります。そういう意味でも、『M-1』は人生の転機かもしれないです。大学を辞めたことで親には絶縁されましたけど(笑)。

 実は両親とは、もともとあまり仲良くなかったんです。父の仕事の関係で子どもの頃はドイツ、スペインで暮らしていました。お笑いには両親とも興味はなくて。僕の芸人としての活動にも興味持ってないんじゃないかな。5年前から実家に帰ってないです。

 あ、でも先日、『内村文化祭』という、ウッチャンナンチャンの内村(光良)さんが主催するライブでコントを披露したのですが、母親が来てて。内村さんと3人で写真を撮ったんですが、そのとき母親からもらった短い言葉といえば、「謝罪があるなら聞きますけど?」でした。きっと、まだ怒ってますね(笑)。

ニシダ
1994年、山口県宇部市生まれ。 上智大学在学中、同級生のサーヤと二人で、お笑いコンビ『ラランド』を結成。2019年、『M-1』グランプリでアマチュアながら準決勝に進出し、話題を集める。講談社『小説現代』、KADOKAWA『野性時代』で小説を執筆するなど、幅広く活動を行なっている。

■小説『不器用で』
鬱屈した日常を送るすべての人に突き刺さる、ラランド・ニシダの初小説『不器用で』。WEB小説サイト「カクヨム」で15万PVを獲得した「アクアリウム」など、珠玉の5篇を収録。繊細な観察眼と表現力が光る。