「私ひとりだったらアイドルにはなれていません」
2005年に、応募総数7924名、最終合格者24名の「AKB48 オープニングメンバーオーディション」に合格した前田さんは、その年の12月に東京・秋葉原にできたAKB48劇場グランドオープンの舞台に立った。07年から俳優活動もスタートさせたが、12年にグループを卒業するまで、トップアイドルとして走り続けた。
“嘘がつけない”と自らを分析するが、アイドルといえば、いい意味で“仮面”を付けてステージに立っている存在のイメージがある。
前田さんも「本当ですよね」と笑う。
――アイドルとしてステージに上がるときだけは、何かのスイッチが入るとか?
「全然ないです(苦笑)。みなさんからは、そういうふうに見えた瞬間もあったのかもしれないですけど、私ひとりだったらアイドルにはなれていません。ステージの上にはいなかったと思います。みんながいたから、そう見えたんです。だから、ひとりで何かやるのは慣れなくて」
現在、俳優に軸を移して活躍している前田さんだが、グループ卒業後にもシングル、アルバムを発売している。
「ひとりで前を向いて歌うのは、やっぱり得意じゃないと思ったので、歌も途中でやめてしまいました。チームでやるものが好きなんです。役者もひとりじゃないから好きなんです」
――WOWOWのアクターズ・ショート・フィルム2「理解される体力」(22)では、監督を務められました。作品づくりのトップとして、ひとりで考えるときもあったのでは。
「あのときは、それぞれのプロの方たちが確実にサポートしてくれる中でやらせていただいたので。全然ひとりじゃなかったです」
ーー出演もされていました。観る人へのご褒美のような形で、主人公とその親友、喫茶店のマスターの3人のメインがいて、前田さんはカウンターの裏から会話に驚きひょっこり顔を出す、といった感じで。セリフもありませんでした。
「“どこかに出演してほしい”と言われてしまったので、“一瞬でもいいんだったら”ということで、あの形になりました。本来の、表舞台に出たくない私自身でやっていいよ、と言われたら、ああなっちゃいます。あれがまんまの私です(笑)」