「なんでこの仕事してるんだろうって、自分でも不思議です」といって前田敦子は笑う。AKB48で絶対的なエースとして君臨し、2012年にグループを卒業してからは、俳優として活躍を続けてきた前田さん。その「変わらない本質」と「迎えたTHE CHANGE」とはーー。【第1回/全5回】

前田敦子 撮影/有坂政晴

 シャギーニットにナイロンスカート。鮮やかなバブルガムピンクの異素材を組み合わせたスタイルで前田さんが現場に入った瞬間、パッと部屋が華やいだ。
 撮影のため、サイトのアイコンとなっている砂時計を手わたすと、じっと見つめて「小さい頃、砂時計持ってました。ずっと見てましたもん」と教えてくれた。

 見つめるのは、砂時計だけではない。前田さんは取材者の質問を、相手の目をずっと見てうなずきながら聞き、答えを考えたのちに、またこちらの目をしっかり見つめながら、明確な言葉で答えてくれる。 

「もっとしゃべらない人かと思った、ってよく言われるんですけど、けっこうね……なんでもしゃべっちゃうんですよ」とフランクに笑う。
 華やかな空気は、国民的アイドルグループのセンターだったキャリアではなく、前田さん本人の人柄がもたらしているようだ。

「“いつも変わらなくてすごいね”って言われるんです。
 表でも裏でも同じ。テレビに出ていても、友達の前でも、家族の前でも、いまこうしてしゃべっていても、私ってこのままなんです。それを“すごいね”と言ってもらえるんですけど、私としては常にフラットにいて、嘘がつけないだけなんです。
“みんな嘘をつきながら、いろんな自分を作って生きているものなんだよ”と言われたこともありますが、私にはそれがうらやましい。逆の立場だと、いつも変わらないほうがちょっとかっこよく見えるみたいで。でも、ただ不器用なだけなんですよ。偽れないだけ。じゃあ、なんでこの仕事してるんだろうって、自分でも不思議です(笑)」