「舞台は好きですけど、よく泣いてます」

――活動の中でも舞台はお好きですか? 前田さんは過酷な現場も好きだということですが、それこそ舞台の稽古は笑顔が多かったりするのでしょうか。

「逆です。舞台は好きですけど、よく泣いてます」

――泣く……泣いてしまったほうが、次に進めるのでしょうか。

「どうなんですかね。ただ舞台だと私は末っ子になれることが多いんです。少し前からちょっと変わってきてはいますが、でも、やっぱり先輩が多いので。先輩の前で泣いちゃいます」

――隠れて隅で、とかではなく、みなさんの前で泣いてしまうのですか?

「舞台の場合は、ちょっと特殊なんです。より密な関係になれるというか。
 先輩たちも育てることをしてくれる。そこは映像とは違う感じがしますね。映像でも、聞けば教えてくれるかもしれませんけど、今は飲みに行くこともない世の中になってしまいましたし。
 昔はもっと交流して深めていく時間があったと思うんですけど、今の映像のお仕事は、時間がなさすぎて、キャッチボールがあまりできないんです。どうしても個々の戦いになってくる」

――なるほど。

「舞台は毎日同じ芝居を繰り返し演じるので、壁にぶつかる瞬間が本当に沢山あります。でも舞台は稽古が1か月あり、家族みたいに仲良くなれるんです。先輩達に悩みを相談できる機会が沢山あるから、話してるうちに涙が止まらなくなって、もう全てをさらけだしてしまう自分がいるんです」

 普段は映像作品での印象が強い前田さんだが、舞台での活動もとても大切な存在になっているのだと伝わって来る。

まえだ・あつこ
1991年7月10日生まれ、千葉県出身。2005年、アイドルグループ「AKB48」の第1期生オーディションに合格し、AKB劇場のオープニングメンバーとして舞台に立つ。第1回、第3回のAKB48選抜総選挙で1位を獲得し、中心メンバーとして活動するが2012年に卒業。以降、テレビドラマや映画、舞台に多数出演し、俳優として活躍している。2019 年に映画『旅のおわり世界のはじまり』と『町田くんの世界』で第43回山路ふみ子映画賞女優賞を受賞。近年の主な出演作に、映画『コンビニエンス・ストーリー』『もっと超越した所へ。』『そして僕は途方に暮れる』、ドラマ『育休刑事』『かしましめし』『彼女たちの犯罪』。2024年は『厨房のありす』が放送中。三島有紀子監督のオリジナル脚本による映画『一月の声に歓びを刻め』で、カルーセル麻紀、哀川翔とともに主演を務める。

●作品情報
映画『一月の声に歓びを刻め』
脚本・監督・プロデューサー:三島有紀子
出演:前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰 ほか
(C) bouquet garni films
配給:テアトル新宿  公開中