2017年のデビュー以来、坂東龍汰はまったく印象の違う役を演じてきた。ドラマ『真犯人フラグ』の配達員、『ユニコーンに乗って』のプログラマー、『きのう何食べた? season2』のケンジの同僚の美容師、W主演映画『フタリノセカイ』でのトランスジェンダー…多彩な輝きを見せる坂東さんにとってのTHE CHANGEとは。【第1回/全4回】 

坂東龍汰 撮影/冨田望

 取材場所で準備をしていると、外での撮影を終えた坂東さんが戻ってきた。会釈すると、坂東さんも会釈を返して通り過ぎる。かと思った次の瞬間、まさに後ろ髪を引かれたといった格好で、グイっと体を戻し、こちらに顔を向ける。
 
「こんにちは! あれ、この後ですか?」
 
「このあとの取材です。よろしくお願いします」と答えると、「そうなんですね! 少しお久しぶりですね! またあとでよろしくお願いします!」と、屈託のない笑顔を見せて戻っていった。
 確かに、過去に坂東さんに取材はしているが、わざわざ戻って来て挨拶してくれるところに、その人柄がはっきりと表れている。
 
 常に周囲を明るくしてくれる坂東さんだが、取材が始まると、実は追い詰められていた時期もあった、と意外なことを教えてくれた。
 
「ありがたいことに、忙しくなって作品の現場を何本か縫っていたときがあったんです。そのときに“イップス”みたいになっちゃって、“よーい、アクション!”の声の後にセリフが出てこないんです」
――どうやって乗り越えたんですか?
 
「共演させていただいた先輩の力が大きいです。その時期に、西島秀俊さん(『真犯人フラグ』)と井浦新さん(WOWOW『両刃の斧』)、おふたりそれぞれ主演の作品があって。
 僕、切羽詰まっていて、特に『両刃の斧』は刑事もので僕も説明セリフがけっこうあったりして、夜中まで撮って、また朝から撮影があって。
 メンタル的に辛く、ドライマウスになったりもして。今思うと、そういう時期があるのは当たり前だと思うし、乗り越えなきゃいけないと思うんです」