「窓を開けるタイミングを含め、どう接していくかが大事でした」 

――なるほど、そこまでの“過程”ですか。観ている側としては、ホテルでトトが窓を開けたシーンやふたりで踊るシーンが印象的でしたが、たしかに最後のれいこの言葉までの“過程”が重要ですね。

 
「それこそ窓を開けるタイミングといったことを含め、トトがれいこにどう接していくかが大事でした。そこでれいこの心が変わらないと、次の日の駐車場のシーンにならないので。そこに嘘がないようにしていくという意味で、あのホテルに入ってからのシーンは、すべて大事でした」
 
――ではあの駐車場のシーンは。
 
「そこの前までができていれば、れいこの言葉を受けられると思いました。れいこの言葉に嘘がなければ、その後の感情やその後のトトの見せる表情に繋がります。あそこからはトトもベクトルが変わるので。彼にとっても強烈な変化だったと思います」
 
 観客としては一番のクライマックスこそ、見どころ、演じどころと思いがちだが、そこにいたる“過程”こそが大事だということ。ひとつひとつの作品、役、そして自分の相手にも向き合っていることが、坂東さんからは伝わってくる。

ばんどう・りょうた
1997年5月24日生まれ、北海道出身。2017 年俳優デビュー。翌年、 NHK スペシャルドラマ『花へんろ 特別編 春子の人形』に主演し注目を集める。22年に公開されたW主演映画『フタリノセカイ』で第32回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞した。主な出演作に、映画『峠 最後のサムライ』『冬薔薇』『春に散る』『バカ塗りの娘』、ドラマ『リバーサルオーケストラ』『王様に捧ぐ薬指』『きのう何食べた? season2』など。最新出演映画『一月の声に歓びを刻め』が公開中。また4月にW主演ドラマ『RoOT / ルート』(TX)を控え、2025年公開の主演映画『君の忘れ方』(作道雄監督)も公開が決定している。

●作品情報
映画『一月の声に歓びを刻め』
脚本・監督・プロデューサー:三島有紀子
出演:前田敦子、カルーセル麻紀、哀川翔、坂東龍汰
(C) bouquet garni films
配給:テアトル新宿  公開中
ヘアメイク 南 郁弥(OLTA)
スタイリスト 李 靖華