本番中にパニエが落ちてしまって……

 最近では更なる変化を感じているそうだ。

「気持ち的に失敗も楽しめる様になってきたなって思います。昔はちょっと間違えたりハプニングが起きた時に『うわ~』って、何かとんでもない事をしてしまったみたいな気持ちになっていたのですが、最近は起きたトラブルに対してどう対処できるかとか、そこからどう自分を持ち直してテンションを元に戻すかということが楽しく思えるようになってきました。
 昨年、舞台『ミナト町純情オセロ~月がとっても慕情篇~』に出演させてもらった時のことなのですが、本番中にパニエ(スカートを膨らませるためのインナー)がスト~ンって落ちてしまったことがあって……。昔だったら“どうしよう!?”と、パニックになって次のセリフも上手く出てこなくなってしまったと思いますが、この時は臨機応変に、そこで起きたことに対して引きずることなく、観ている方に“これが元々の演出でしたよ”と思わせるぐらいの気持ちで出来たんです。自分の中で変わったなと思えることでしたね」

 気持ち的にも余裕が出来たことなのだろう。そんな中での最新出演作『ゴールド・ボーイ』は沖縄を舞台にしたクライム・エンターテインメントものだ。

「最初に脚本を読んだ時、そのスピーディーな展開に本当に夢中になって、何を信じて良いのかが判らない……というところに面白さを感じました。これが映像になったらどんなものになるんだろうとすごく楽しみになりましたね」

 演じた東静は沖縄でも有数な事業家である両親を持つが、夫・昇との関係はどこか冷めた感じのある女性だ。

「やっぱり人って存在として多面的であると思っていて、出会う人や接する人によって、その人の見え方がガラっと変わるというのが、この作品に登場するキャラクターに当てはまっていると思うんです。静にも、そんな部分があるのですが、そのアンバランスさみたいなところがとても人間らしくて演じ甲斐がある女性だなと思いましたね」

 岡田将生さん扮する夫・昇との距離間も、また絶妙だ。

「私も岡田さんもちょっと人見知りなところがあって、その少し距離があってギクシャクした感じは、会話の無くなった夫婦みたいな空気感で劇中の二人のままという感じでしたね。昇が電気スタンドをなぎ倒すシーンがあるのですが、本番ではスタンドがバラバラに壊れてしまい、昇の得体のしれない恐怖みたいなものを感じたんです。
 これまでも色々とお芝居をさせていただいてきましたが、本当に“怖い”と思ったのはこれが初めてだったかもしれないです。でも、カメラが回っていないところでは岡田さん、冗談も仰っていて“役と本人は違うから安心”と思いましたね」

松井玲奈(まつい・れな)
​1991年7月27日、愛知県生まれ。O型。2008年デビュー。主な出演作は、映画『よだかの片思い』、NHK朝ドラ『まんぷく』『エール』、大河ドラマ『どうする家康』など。24年3月8日には映画『ゴールド・ボーイ』が公開。18年小説家デビューし、翌年初の単行本『カモフラージュ』を刊行。23年12月より「小説すばる」にて『カット・イン/カット・アウト』を連載中。

●作品情報
映画『ゴールド・ボーイ』
3月8日(金)より全国ロードショー
配給:東京テアトル/チーム・ジョイ
監督:金子修介出演:岡田将生、黒木華、羽村仁成、星乃あんな、前出燿志、松井玲奈、北村一樹、江口洋介

沖縄の有数企業・東ホールディングスの会長夫婦が崖から転落し死亡した。警察は事故として処理しようとするが一人娘である静(松井玲奈)はそのことに対し疑問を抱く。その頃、静の夫である昇(岡田将生)の前に朝陽(羽村仁成)ら3人の子供が現れる。そして朝陽は昇にある動画を見せる……。中国の動画サイト「iQIYI」で総再生回数20億回を誇るアジア最高峰ドラマ「バッド・キッズ 隠秘之罪」(邦題)の原作小説を、舞台を沖縄にして日本映画化したクライム・エンターテインメント。