1984年にデビューするやいなや、瞬く間に人気アーティストとなったBARBEE BOYS。そのベーシストであるエンリケの活躍は、バービーだけに留まらない。浜崎あゆみを始め、永井真理子、江口洋介などの幾多のスターのバックバンドも務めた。現在も、ベーシストとして精力的な活動を続けている名プレーヤー“エンリケ”の誕生と転機に迫る――。【第5回/全5回】

ENRIQUE 撮影/冨田望

 1992年、数多くのファンに惜しまれながらも、バービーボーイズを解散後は、永井真理子さんや江口洋介さんのバックバンドにベーシストとして参加したエンリケさん。順調にキャリアを重ね、その後、2000年代を代表する歌姫、浜崎あゆみさんのバックバンドにベーシストとして参加する。順調に思われるミュージシャン生活だったが、そこには知られざる苦悩があった。

「もともと、打ち込みの音楽である浜崎さんの曲を、コンサートでは生演奏に置き換えている。できるかぎり原曲と同じように聞こえるようにプレイしていていた。曲によってはギターが入っていない曲もあったけれど、義男ちゃん(※野村義男、ギタリスト)がギターをウィーンって入れていた。そこに、浜崎さんのチームが音源の完全再現性を求めてくるようになってきた。

 そうなると、生のベースの音ではなくて、パソコンで出せるベースの音を使えばいいじゃないですかってなっていった。それって、人としてはいてほしいけれど、音としては欲しくないって言われているようなことだからね。これはもう俺が手伝っていける部分はなくなったって実感した。浜崎さんのチームを離れるときは、“卒業”って言葉を使わせてもらったけれど、もっと好きなことを極めたいって気持ちも高まっていたね」