「良くも悪くも、きれいごとだけではムリですね」

ーー誰もが共感できないような、ひどい人物でもですか。

「そう。だって、演じる僕がそいつのことを否定して”イヤだ”と思ったら、意味がわからない。とはいえ、そういう作業は楽しいわけでもないんですよね。ひどい奴の思考回路を作らなきゃいけないから。”イヤだな”みたいに思うけど、でも、それが僕の仕事です」

 役を理解するーー役作りの過程で「自分のことがわからなくなる瞬間もある」という。

「だからこそ、自分という人間をたくさん知っておかなければなりません。自分を知らないとコントロールできないし、逆に自分を知っていくことで”俺って、こんな奴だったの?”と気づくこともある。それでちょっとガッカリする、みたいな。でも、それを”別にいいや”という心境に保つ必要がある。良くも悪くも、きれいごとだけではムリですね」