コンサート1週間前から胃が痛くなっていました

 1977年にシングル『河のほとりに』をキャニオン・レコードからリリースし、再々スタートを切った谷山さん。自分自身で曲を歌うことについては、つねに葛藤があったという。

「若い頃から、いろいろと屈折した性格だったんですよ。コンサートって、私の歌を聞きにお客様が集まってきてくださっているのに、ステージの上に立つと“みんなが私に敵意を持っている”ように感じてしまっていたんです。

 それは、自分のことが好きになれなかったせいだと今は思うんです。だからコンサートが決まると、1週間前から胃が痛くなっていました。心の中では“なんとかして中止にならないかな”って本気で考えていたくらい辛かったです」

 人前に立つのが苦だったという谷山さん。そこから現在のようにコンサートを楽しめるようになるまでは、10年かかった。

「87年から始まった『101人コンサート』が大きかったです。第1回は東村山市中央公民館でした。それまではコンサートって、だいたいホールでやっていたんですね。

 でも、この『101人コンサート』は、一般の方に主催していただいて、“電気と屋根がある場所ならどこでも良い”っていうコンセプトで、全国各地で開催していました」

谷山浩子 写真/能美潤一郎