「なんでこんな歌を作ったんだろう?」と思うことも

――生歌と実際の歌唱が同じって、すごいことですよね。

「でも、自分でも“なんでこんな歌を作ったんだろう?”って思うような、難しい曲もあります。 “メロディをこうしたい”っていうのを優先してしまうので、結果的にめちゃくちゃ歌いづらくなってしまった曲もあります」

谷山浩子 写真/能美潤一郎

 谷山さんのプロとしての姿勢はつねにシビアだ。

「コンサートは、音響や照明などの演出があるので、自分では出来が良くなかったなって思っても、ファンの方のアンケートでは“すごく良かった”って書いてあったりするんです。

“そんなに最高なコンサートだったかな”と思って、あとで音源を聞いたら“どこが最高なの……”って頭を抱えるような出来だったこともあるんですが。コンサートは、色々な演出の部分にすごく助けてもらっているって実感しています」

 谷山さんが提供した楽曲として外せないのが、斉藤由貴さんの『土曜日のタマネギ』や『MAY』(共に作詞)のような名曲の数々。どのようにして誕生したのだろうか。

「じつは彼女に歌詞を提供する以前にも、アイドルの方に依頼されたことが何度かあったんです。その頃はアイドルっぽい感じの歌にしようと頑張ってました。でも、由貴ちゃんに関しては、本人が不思議な雰囲気の方だったので、わりと自由だったんですね」

 今でこそ様々なジャンル、世界中の楽曲にアクセスしやすい状況だが、歌謡曲全盛期の時代において谷山さん風の楽曲に馴染みが薄い人も多かった。

「歌詞は“なにこれ?”っていう人がいないものにしようと思っていた。でも、由貴ちゃんが歌番組で『土曜日のタマネギ』を披露していたら、“タイトルが変わってますよね”って言われていたんです(笑)。やっぱり自分のものさしは、他の人とは違うんだなって感じました」