出版社の書籍担当編集者。副編集長として活躍する真面目な人物像。桐谷さんが演じる橋本は、あまり表情を変えず、一見、落ち着いていて真面目そうな編集者である。この役を演じるためにこだわったのは、自身の直感だとインタビューでは語ってくれた。

「彼の過去にあったことやバックボーンを深め、染み込ませる作業をしながら台本を読んで自分の中にすっと入ってきた感覚を大切にしました。たとえば橋本は編集者だから編集者らしい動きや言葉遣いを…ということではなくて、なぜ橋本が編集者になる運命を選んだのかということに重きを置いていました。
 物語が進むたびに深い闇が浮き彫りになっていく中、橋本の人物像もどんどんと浮き彫りになってくる。その不気味さや悲しみを橋本と僕は共有しながら築き上げられたので、現場では何も考えずに演じることが出来たと感じています」

 全5話で完結する濃密なミステリードラマ。橋本と沙奈の取材は、18年前の「女子高生両親殺害事件」で死刑囚となった男・大渕秀行(橋本良亮)と獄中結婚をした大渕礼子(蓮佛美沙子)、ホストだった大渕に惚れ込み貢いで破滅した元愛人・市川聖子(斉藤由貴)など多岐に渡る。複雑な人間関係の謎が解けるとともに事件の真相にたどり着くなか、人間という生き物の嫌な部分が露呈していく。

「原作は“イヤミス作品”と言われているものですが、この“イヤミス”の捉え方って人それぞれですよね。“嫌な気持ちになる”と捉える方もいれば、懐かしさや安心感を感じる方もいるかもしれない。俺はどちらかというと後者のほうで、この台本を読ませてもらったとき、不思議と嫌な感じがしなかったんですよ。人間の哀しみや孤独といった心情が、むしろ心地良さを感じます。
 俺ってちょっとおかしいのかなと思いましたけど(笑)。物語をいろいろな角度から捉えて、人間という生き物の複雑さに触れられるこのドラマを楽しんでいただけたらと思いますね」