お笑い芸人を目指した理由は「面白い先輩たち」

 まずは入学金と授業料を稼がなければいけないと、時給の高いパチンコ店でバイトを始めました。当時はパチンコなんて子どもだまし、なんて思っていたのですが、バイトの先輩から「一度打ってみれば分かる」と言われ、実際に他店で打ったところ、一瞬にして何万円も勝ったんです。これで学費を稼いでやろうとパチンコを極めていきました。

 おかげで晴れて大学に入学。大阪芸大を目指したのは、プロモーションビデオやCM、ドキュメンタリーなど映像に興味があったのがきっかけでした。

 ところが入学した後に、法律が変わって“パチンコ規制”が始まります。出玉が制限されたことで、どうしても勝てなくなり、2年目の授業料を払うことができずに中退を余儀なくされました。

 でも、短い大学生活のうちに出会ったのが、今も活躍されている『ミルクボーイ』さんや『ななまがり』さん。落語研究会の先輩だったんです。当時からその2組は吉本のオーディションを受けに行っていて、かつ、めちゃくちゃ面白かった。

 僕がお笑い芸人になろうと思ったのは、先輩たちに触発されたからです。この出会いがなければ、今も夜の世界にいたかもしれません……というのも、大学を除籍になった後、僕は高収入バイトを探して風俗店で働いていたのです。

 ペットボトルに入っているローションを専用の容器に詰め替える仕事をしていたのですが、今でも職人のような速さで詰められるようになりました。特に披露する場所がない特技ですけどね(笑)。

 その後、その店がつぶれたのですが、店の偉い人から「安心しろ、お前の行く場所は決まっているから」と、指示された場所へ行くと、そこは別の風俗店の事務所で、受付をすることになりました。今考えたら身売りみたいなもんですよね(笑)。

 でもこの経験があったからこそ、「最悪、お笑いで食えなくなったら、夜の業界に戻ればいい」と、楽観視できるようになりました。

鈴木もぐら(すずきもぐら)
1987年5月13日生まれ。2012年にコンビ『空気階段』を結成。16年に『マイナビLaughter Night』(TBSラジオ)の第3回チャンピオンライブで優勝し、冠特番を獲得。この放送が好評を博して17年4月に『空気階段の踊り場』としてレギュラー化した。同大会では2連覇を達成している。『キングオブコント2021』王者。吉本興業所属。

空気階段 第7回単独公演「ひかり」
初開催地4か所を含む、全国11か所29公演の全国ツアー開催決定
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