六代目豊竹呂太夫が考える「文楽の将来」
このたび、祖父が名乗っていた豊竹若太夫という名跡を襲名させていただくことになりました。若太夫というのは、豊竹座の創始者である大名跡なんです。僕の祖父も、70歳を過ぎてから芸風が変わり、進化していたそうですが、いまは寿命が伸びていますから、僕は80歳を過ぎてからも進化してやるぞ、と思うてます(笑)。
いま、僕には男5人、女5人のプロの弟子がいますけど、それぞれにきっちりした型を伝えていかなければと思っています。個性を出したらあかんのです。まずは型を身につけて、それから各自の工夫、努力で味付けをするんです。太夫らしい声になるまでに20年ほどかかります。三味線弾きさんは楽器を持ってるし、人形遣いさんは人形がありますけど、太夫は自分の喉に楽器を作らなあきません。
文楽の将来のことも考えます。太夫の人数も減ってきていますから。僕が入門した50年前は、文楽の衣装、髪を結う床山、人形の首を造る人も皆、男性だったんです。でも、最近は首を造る人以外は、全員、女性ですよ。だからね、いまは国立劇場の養成所も研修生は男子しか募集してませんが、女子にも門戸を開いたら、たくさん応募があるんじゃないでしょうか。
淡路島や徳島では、人形浄瑠璃をやっている人たちの10人のうち9人が女性です。伝統芸能でも、落語や能楽にはすでに女性が舞台に上がっています。競輪選手でも競艇も競馬も、女性が活躍している時代ですよね。
思いつきで言うてるんじゃありません。僕がこの二十数年間、200人以上の素人の弟子を実際に教えてきた経験から、女性は十分にできると分かるからです。いまは、そういうことも考えないといけない時代だということですね。
六代目豊竹呂太夫(とよたけ・ろだゆう)
1947年4月16日生まれ、大阪府出身。’67年、三代目竹本春子太夫に入門。祖父十代目豊竹若太夫の幼名・豊竹英太夫と名乗る。翌年4月、大阪毎日ホールで初舞台。’69年、春子太夫の逝去により竹本越路太夫の門下となる。‘17年4月、大阪・国立文楽劇場にて六代目豊竹呂太夫を襲名。’22年4月、切語り(重要な場を語る太夫に与えられる最高の資格)に昇格。’24年4月、十一代目豊竹若太夫を襲名する。
豊竹呂太夫 改め 十一代目豊竹若太夫 襲名披露公演『和田合戦女舞鶴』市若初陣の段
●大阪4月6日(土)~29日(月・祝)国立文楽劇場
●東京5月9日(木)~27日(月)シアター1010(足立区文化芸術劇場)
問い合わせ:国立劇場チケットセンター TEL. 0570-07-9900 TEL. 03-3230-3000 https://ticket.ntj.jac.go.jp/