――壮絶な日々ですね。
「必死でこなすことしかできなかったです。当時仕事でお会いした人が誰だったかもあまり覚えていない。やっていた仕事にしても、もう忘れていることのほうが多いですね。それでも諸先輩方にお会いして見て学んだり、叱られたりして成長をしていたと思います。
番組に呼ばれているというのは何か私に求められていることがある。番組によってもカラーがあり、役割分担も毎回違うようにありますからね。ドラマは台本があって役がありますが、バラエティはそれがないので「今日はこの千堂あきほを演じていこう」と自分で作っていくしか方法がないんです。
クイズ番組『マジカル頭脳パワ ー!!』にもレギュラー出演させていだきましたが、ふつうに高校を卒業しただけなので、自分がまさか正解をたくさん出せるなんて。“カンニングしているんじゃないか?”という投書もテレビ局にたくさん来ていたと聞いています。実は親からも「芸能人は答えを知ってるの?」と聞かれるくらいだったんです。
そのように思われていた『マジカル』の千堂あきほがいたり、別のバラエティ番組ではどんくさいことをやってみたり、わからないことを“わからない”と言ってしまうようなサバサバしたキャラクターがいてもいいのかなと考えたり。一つひとつを吟味して演じ分けて、役者というスキルを使ったスタイルでバラエティもこなしていたと思います」
――「千堂あきほを演じる」ということですかね。
「そうですね。本当、それだと思います。千堂あきほ自体が、みなさんに作っていただいたキャラクターという感じで。活動していく中で少しずつ“千堂あきほ”を作り上げていき、さらにそれを演じ分けて楽しめるようになったのかなと思っています。どこかで自分を切り替えて演じてみる。“千堂あきほ”という役をもらったんだと思って演じてみるという感じですね。
怒られると知っていてもやりたかったあの髪型
――千堂さんと言えばソバージュヘアーも印象的でした。
「ロングヘアーで片方だけおろして前髪をくるっと半分上げて半分下ろすみたいな髪型を80年代後半から活躍していた浅野ゆう子さん、浅野温子さん、田中美奈子さんたちがやられていたんですよね。それがブームだったんです。
自分はそこに遅れて乗っかったような感じがあって。何か違うのがないかなと探していたときに、たまたま外国のファッション誌を開いたらモデルさんがソバージュしていたのを見かけたんですよ。それを見て面白いなと思って。清楚な雰囲気のストレートの髪型が嫌だったこともあって変えたいと思い、ヘアカットしてくださる方に相談しました。
その方はおそらく会社から“勝手に髪型を変えてはいけない”と言われていたと思うので、最初は断られたのですが、私が責任を持つということで全部ロッドを巻いてもらってソバージュにしたんです。やっぱり事務所に怒られたんですけど、ほぼ同時に杉本彩さんとか有名な方もソバージュにして。次第に流行ってきたのでうれしかったですね」
(取材・文/松本浩次)
千堂 あきほ(せんどう あきほ) 1969年4月5日生まれ、兵庫県出身。 1990年に歌手デビュー。『オールナイトフジ』『東京ラブストーリー』(ともにフジテレビ系)や『マジカル頭脳パワー!!』(日本テレビ系)など人気番組に多数出演。 00年に結婚し、現在は2児の母。